日経Gooday

答えと解説

正解は、(3)標準体重よりも少し重い人が最も死亡リスクが低い です。

図はイメージ=PIXTA

肥満が健康に良くないことは常識です。特に内臓脂肪が増えると高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まり、動脈硬化を進めて脳卒中や心筋梗塞につながってしまいます。

健康のためには、食事では食べ過ぎを控え、血糖値を上げる白いごはんや、脂肪の多い肉は控えめにし、塩分や油の多いジャンクフードは避けるべきだと思っている人は多いでしょう。しかし、これまでに数千人の高齢者を診察してきた医療法人社団悠翔会理事長の佐々木淳さんは、「年を取ったら大切なのは、とにかくたくさん食べること。やせているよりも、むしろ太ったほうがいいのです」と指摘します。

なぜ年を取ると太ったほうがいいのでしょうか。肥満度の判定に使われるBMI[注1]という指標から考えてみましょう。日本肥満学会では、BMIが18.5未満を「低体重(やせ)」、18.5~25未満を「普通体重」、25以上を「肥満」と定義しています。最も疾病が少ないのは22のときで、このBMIが22になる体重を「標準体重」と呼びます。

しかし、日本の中高年、40代以上の約35万人を10年以上追跡した研究[注2]によると、女性で最も死亡リスクが低いBMIは23.0~24.9、男性では25.0~26.9でした。どちらも標準体重より少し重いくらいが最も長生きだったのです。

[注1]BMI(体格指数)は、体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数字で、例えば170cmで65kgなら「65÷(1.7×1.7)」で22.49になる。

[注2]J Epidemiol. 2011;21(6):417-30.

BMIと全死因の死亡リスク(ハザード比)の関係

死亡リスクは、BMIが23.0~24.9の場合を1とした値(データ:J Epidemiol. 2011;21(6):417-30.)

「中高年の肥満がなぜいけないかというと、動脈硬化につながる恐れがあるから。しかし高齢になれば、加齢によってある程度は動脈硬化が進んでしまいます。動脈硬化が進んだ状態になると、その予防は若い頃ほどは意味がなくなってきます。実際、75歳以上の高齢者が降圧薬を飲んで血圧を下げても、脳梗塞の発症を1年遅らせる程度の効果しかないという報告もあります」(佐々木さん)

高齢になると、加齢とともに心身の活力(筋力や認知機能など)が低下し、生活機能障害や要介護状態、死亡などのリスクが高くなる「フレイル(虚弱)」の問題が大きくなってきます。「生活習慣病を予防し、動脈硬化を防ぐことよりも、フレイルを避けるために、高齢になったらよく食べて太ったほうがいいのです」(佐々木さん)

この記事は、「なぜ、年を取ったら『どんどん食べる』が正解なのか?」(伊藤和弘=ライター)を基に作成しました。

[日経Gooday2022年12月5日付記事を再構成]

「日経Gooday 30+」の記事一覧はこちら

医療・健康に関する確かな情報をお届けする有料会員制WEBマガジン!

『日経Gooday』(日本経済新聞社、日経BP社)は、医療・健康に関する確かな情報を「WEBマガジン」でお届けするほか、電話1本で体の不安にお答えする「電話相談24」や信頼できる名医・専門家をご紹介するサービス「ベストドクターズ(R)」も提供。無料でお読みいただける記事やコラムもたくさんご用意しております!ぜひ、お気軽にサイトにお越しください。