10秒間片脚立ちができなかった人たちの死亡リスクは1.84倍
10秒間片脚立ちができなかったのは、全体の約2割に当たる348人でした。10秒間片脚立ちができなかった人たち(不可能群)は、できた人たち(可能群)に比べて高齢で、71歳から75歳の集団では半数以上が失敗していました。また、失敗した人は、成功した人に比べ健康状態が不良で、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)や糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満などの患者の割合が高くなっていました。
中央値で7年間追跡したところ、全体の7.2%(123人)が死亡していました。死因は、がん(32%)、心血管疾患(30%)、呼吸器疾患(9%)、新型コロナウイルス感染症(7%)などでした。
可能群の死亡は4.6%(1354人中62人)、不可能群の死亡は17.5%(348人中61人)で、両群の死亡リスクの差は有意でした。
死亡リスクに影響を及ぼす、年齢、性別、BMI(体格指数)、併存疾患(冠動脈疾患、高血圧、脂質異常症、糖尿病)を考慮して分析したところ、可能群と比較した不可能群の総死亡リスクは1.84倍でした。
死亡の危険因子として知られている、「年齢、性別、BMI、冠動脈疾患、高血圧、糖尿病、脂質異常症」からなる死亡リスク予測モデルに、この10秒間片脚立ちの可・不可を加えると、死亡リスクの予測精度は有意に上昇しました。
今後、「なぜ10秒間片脚立ちの可・不可が総死亡リスクと有意に関係するのか」「片脚立ちを10秒間できるようになれば死亡リスクが低下するのか」などについて、さらなる研究が必要となりますが、中高年者にとって10秒間片脚立ちは、健康状態を評価する簡単で有効な方法の一つであることが示唆されました。
[日経Gooday2022年9月15日付記事を再構成]
大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。
