ゲイシャと一緒に味うコーヒーゼリー 「カフェ・バッハ」

2軒目は、半世紀近くコーヒーゼリーを提供し続けている、台東区日本堤の「カフェ・バッハ」だ。創業は68年。自家焙煎を始めた75年ごろから、夏の季節商品としてコーヒーゼリーをスタートした。
「焙煎仕立ての新鮮な豆を使えるようになったのがきっかけですね。シュガーシロップを添えたシンプルなゼリーと、もう一つ、コーヒーゼリーの上にかき氷と缶詰のフルーツを飾って、コーヒーで作ったシロップをかけたアレンジメニューも人気がありました」(取締役の田口文子さん)
そんなコーヒーゼリー草創期を経て、現在のブランマンジェとコーヒーゼリーの2層構造が生まれたのは90年。店に製菓部門が誕生した年だ。これだけでも十分、オリジナリティーのある組み合わせだが、さらにアングレーズソースと果物が添えられるようになったのが2005年。店の成熟に合わせて、コーヒーゼリーも進化してきた。
再びコーヒーゼリーに変化が訪れたのは、新型コロナウイルス禍だった。20年の夏は、テークアウトにも対応できるよう、コーヒーゼリーにシュガーシロップを添える初期のスタイルに変更。昨年は提供をいったんお休みしていた。そして今年、2年ぶりにブランマンジェとコーヒーゼリーの2層スタイルで復活。引き続きテークアウトに対応するため、アングレーズソースと果物は外した。

15年続いた一代前のコーヒーゼリーを知る人には、ブランマンジェの割合が増えたように見えるかもしれないが、「器の口径が小さくなったので多く見えるのですが、以前よりブランマンジェの量は少し減ったんですよ」(製パン・製菓長の井上弘明さん)
コーヒーゼリーにはフレンチローストよりも深煎りのイタリアンローストのブレンドを使用し、甘味は付けない。ブランマンジェのミルキーな甘味でコーヒーの香りと苦味を際立たせるスタイルはそのままだ。
ゼリーを食べながら飲み物を相談すると、「ゲイシャと合わせてみませんか」と田口さんから提案された。ゲイシャはエチオピア生まれのコーヒー豆で、現在は中南米など世界各地で栽培されているが、その希少性もあって飲める店は限られる。10年ほど前、バッハではゲイシャを使ったコーヒーゼリーを販売したこともあったそう。

コーヒーゼリーの後にコーヒーを頼む人も多いと思うが、ことゲイシャに限ってはゼリーと一緒に味わうことをお薦めしたい。ゲイシャの豊かできれいな酸味が、ゼリーのほろ苦さとミルキーなブランマンジェの相性をいつまでも初々しく楽しませてくれる。ゲイシャ好きの人にとっても、得難い体験になるはずだ。コーヒーゼリーは5月末~9月ごろまで提供している。