頻尿、尿漏れ…男女の尿トラブルはなぜタイプが違う?
この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください!
(1) 男女で「尿道の長さ」が違うから
(2) 男性にしかない「前立腺」が加齢とともに肥大するから
(3) 女性にしかない「骨盤底筋群」が加齢とともに衰えるから
答えは次ページ
答えと解説
正解(間違っている記述)は、(3)女性にしかない「骨盤底筋群」が加齢とともに衰えるから です。骨盤底筋群は男性にもあります。
尿漏れの中でも、女性はおなかに力が入ったときに不意に起こる「腹圧性尿失禁」、男性は排尿のあとに下着の中でジワッと漏れる「排尿後尿滴下」に悩む人が多いことが知られています。
性別によって尿トラブルの特徴が異なるのは、男性と女性の膀胱(ぼうこう)と尿道の構造が違うからです。
男性の尿道は、膀胱から前立腺、骨盤底筋群、陰茎を通るため、L字型に曲がっていて、その全長は約20cmあります。女性の尿道は、膀胱から骨盤底筋群を貫き、尿道口に真っすぐに伸びていて、長さは約4cmほどしかありません。そのため、尿道の短い女性のほうが、ふとした弾みに尿漏れが起きる腹圧性尿失禁になりやすいというわけです。
膀胱と尿道の構造
男性の排尿後尿滴下の原因は主に2つあります。1つは尿道を締める働きをする「球海綿体筋」という筋肉の機能低下、もう1つは尿勢(尿の勢い)の低下により尿道に尿が残りやすくなることです。
そして後者の背景には、「前立腺肥大」が多く見受けられます。つまり、排尿後尿滴下は、前立腺肥大が直接的な原因ではないものの、その影響を受けているというわけです。
前立腺は、男性にしかない臓器で、膀胱のすぐ下に位置しています。膀胱から伸びる尿道の根元の部分を取り囲んでいるため、前立腺が肥大してくると尿道が圧迫されて狭くなり、さまざまな尿トラブルが起こってきます。前立腺が肥大するメカニズムは、正確には分かっていませんが、加齢や男性ホルモンの減少が関係していると考えられています。
女性は「骨盤底筋群」が衰えやすい
女性の場合は、妊娠や出産、閉経といったライフイベントの影響で、尿漏れをはじめとする尿トラブルが起こりやすくなります。
骨盤内にある膀胱や子宮などの臓器を支え、膀胱の出口や尿道、膣などを締める働きをする「骨盤底筋群」は、妊娠や出産によってダメージを受けます。妊娠中は胎盤や羊水、胎児の体重を骨盤底筋群が支えることになり、大きな負荷がかかりますし、出産時には骨盤底筋群が引き伸ばされて、大きく損傷します。
骨盤底筋群は男性にもありますが、ライフイベントの影響で、女性のほうがより衰えやすくなるのです。
また、妊娠・出産経験がない場合でも、閉経前後の更年期には、女性ホルモンの分泌量が減少することで、頻尿や尿漏れをはじめ、陰部の乾燥や痛み、膀胱炎といった尿路や陰部にまつわるトラブルが起こりやすくなります。
このように、男女で尿トラブルの起きる仕組みは違うものの、加齢とともにトラブルが起きやすくなることは共通しています。尿トラブルで生活の質(QOL)が大きく損なわれる場合は、泌尿器科を受診して医師に相談しましょう。
[日経Gooday2022年6月20日付記事を再構成]
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