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ミシュランも環境配慮 東京サステナブル・イタリアン

イタリア美味の裏側(14)イタリア食文化文筆・翻訳家 中村浩子

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NIKKEI STYLE

最近、「サステナビリティ(持続可能性)」の話題を目にしない日はない。グルメガイドで影響力を持つフランスの『ミシュランガイド』にも、一つ星から三つ星、手ごろな値段で良質な食事が楽しめるビブグルマンに加えて、サステナブルな取り組みを評価する「グリーンスター」が2020年から設けられた。昨年12月に発表された『ミシュランガイド東京2022』で、東京のイタリア料理で初めてグリーンスターを獲得した「FARO(ファロ)」(東京・中央)の料理から、サステナビリティについて考えていきたい。

選んだメニューは、ランチの「ファロコース」(1万円、サービス料10%別)。同店は動物性食材を使わない「ヴィーガンコース」が有名だが、国際薬膳師であるわたしは、そのベースにある伝統医学の考え方から、肉や魚を食べないことをあまり推奨していない。肉や魚からしか人体に補えないアミノ酸もある。だから、あえて動物性食材も使う「ファロコース」を選んだ。ただし、このコースにはヴィーガンの要素も組み入れられている。

18年から「FARO」のエグゼクティブシェフをつとめるのは、能田耕太郎さん。ローマでミシュラン一つ星を獲得した「Bistrot64(ビストロ・セッサンタクアットロ)」の共同経営者で料理長でもある。

前菜は「イバラガニとラディッシュのマリネ」。カニとしては聞きなれない「イバラガニモドキ」は、漁網にかかってもそのまま捨てられることの多い、いわゆる未利用魚だ。能田シェフは、限られた水産資源を守る日本のトップシェフたちの団体「Chefs for the Blue(シェフス・フォー・ザ・ブルー)」に参加しており、そこから紹介を受けた神奈川県逗子の漁師、長谷川大樹さんが直送してくる魚のなかにあったのが、「イバラガニモドキ」だった。

長谷川さんは水揚げした魚介を写真に撮り、能田シェフに送ってくる。そこから能田シェフが選び、翌日にはそれが店に届くというシステムだ。特に昨季から今季はズワイガニが記録的な不漁で、価格は例年の2倍を超えていたので、未利用魚を使うことはサステナビリティに役立ち、コストダウンにもつながっている。

驚いたのは、この一皿とノンアルコールペアリングコースのドリンクとの味の相乗効果である。料理は、トマトヴィネガーに浸したカニとラディッシュに、キンカンコンブチャの寒天ゼリーをかぶせ、バジルオイルをソースにしたもの。「コンブチャ」とは、紅茶キノコの発酵液で、かんきつ類のほかいろいろな風味を足すことができる。

この料理とペアリングしたのは、レモネード、キンカンコンブチャ、皮ごと発酵させたブラッドオレンジを混ぜた「シトラス三重奏」というドリンクである。これを飲むと、トマトヴィネガーでうま味を加えたカニの身に、ドリンクのレモンとブラッドオレンジの酸味がプラスされて、まるでかんきつ系のカニ酢につけたような味に感じるのだ。キンカンは実が傷んだものを発酵させるので、フードロス削減にもなっている。

ローマのミシュラン店の味が東京でも堪能

パスタは、能田シェフの看板メニューである「じゃがいものスパゲッティ」。エディハド航空が主催した「テイスト・ザ・ワールド2017」にローマ代表として能田シェフが出場し、優勝したメニューだ。

15年からローマの店で出し、リニューアルしたメニューだが、それを日本でも食べられるのはうれしい。細い麺状にしたジャガイモは、ゆでたものと揚げたものの食感の違いが楽しめ、発酵バター、イタリアの魚醤(ぎょしょう)「コラトゥーラ」、リコリス(甘草)とビーツのパウダーで味つけした。「この料理は、パンにバターとアンチョビをのせる食べ方がローマにあり、そこからイメージしたんです」と能田シェフはいう。

メインの魚は、「ヒメジのソテー 泡立てたミルクと芽キャベツ」。ミルクは、ジャージー牛を完全放牧する岩手県のなかほら牧場の牛乳を使っている。平らな牧草地でなく、起伏のある山地に放牧する「山地酪農」の牧場の1つだ。1年を通して山で暮らす牛は、在来野草である野シバや枯れ葉などを食べる。その点がサステナブルといえる。

そのミルクからつくられたチーズと野菜のブロード(だし)のソースにも、チーズの発酵の技術が生かされている。「発酵の技術を多く使うのは、もともと(単調になりやすい)ヴィーガンメニューの味に変化や深みを出すためでした」と能田シェフは明かす。メインの肉は、抗生剤不使用、飼料にハーブを混ぜた「美笑牛」を使っている。家畜の肉はサステナビリティの点からなるべく使用を控えたいという思いが能田シェフにはある。

イチゴのショートケーキを再構築すると……

最後はデザートだ。2種類あり、そのうちの1つが「ミルクからあふれる赤い果実のかおり」。担当した加藤峰子シェフパティシエは、フランスの「ミシュランガイド」に並ぶグルメガイド『ゴ・エ・ミヨ2022』(22年3月発刊)で「ベストパティシエ賞」を受賞した。

ミルクは、日本よりイタリアの居住年数のほうが長い加藤さんがなかほら牧場を自ら訪ねて感激し、使うことを決めたという。メニュー名の通り、熊本県のひかり農園の無農薬、無化学肥料栽培によるイチゴの「香り」に焦点を当てた。「日本のイチゴは甘く、だいたい糖度10~16度ぐらいではないでしょうか。でも、香りが弱い。わたしにとって、イチゴは香りと酸味で春を告げるものです。このイチゴは、納品のときに店のエレベーターに充満するほど香りが強いんです」と加藤さんは話す。

皿の上からはイチゴの赤い果実は一切見えず、一見すると、白づくし。泡立てたミルクを乾燥させたもの、イチゴのエッセンスが入ったジェラート、スポンジケーキ、パンナコッタ、濃厚クリーム、ミルクがけのイチゴ……と「イチゴのショートケーキ」と構成要素は同じでも、新たに再構築したデザートなのである。酸味のあるイチゴは、ほかの構成要素とのバランスがよい。

2番目のデザートは、いまや加藤さんの看板メニューである「日本の里山の恵(めぐみ) 花のタルト」。このデザートは「ヴィーガンコース」にも入っている。米粉のタルト生地に、オレンジとレモンの果汁を加えた豆乳クリームを入れ、メイプルシロップで味つけしたもの。上には、えぐみのない約20種のエディブル(食用)フラワーとハーブが載っている。

「イタリアの食後酒アマーロのように、デザートが消化を助けるようにと考えています。ですから、大和当帰やヨモギといった薬草もハーブのなかに入れました。余った花やハーブは乾燥させ、ハーブティーとしてスタッフたちに配ったりして楽しんでもらっています」(加藤さん)

日本の里山をイメージしたこの小さなタルトは手でつまんで食べるため、鼻の近くまでもっていく。すると、まさに百花の香りがし、花を口に含むと、幼いころに遊んだレンゲ畑や、蜜を吸ったツツジの花の記憶がわたしによみがえった。サステナブル・イタリアンとは、地球とそこで生きる物に思いをはせ、人を優しい気持ちにさせる料理なのかもしれない。

中村 浩子
イタリア食文化文筆・翻訳家。東京外国語大学イタリア語学科卒。イタリアの新聞社『ラ・レプブリカ』極東支局長助手をへて、文筆・翻訳へ。著書に『イタリア薬膳ごはん』(共著)『「イタリア郷土料理」美味紀行』、訳書に『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』(共訳)『スローフード・バイブル』。

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