バーでノンアルハイボール? 「モクテル」の波が到来

銀座「ロックフィッシュ」では、看板のハイボールに初めてノンアル版が登場した

10月に入って、ようやく飲食店でのアルコール提供が認められるようになった。好きなお酒と共に料理を味わえる日が戻り、久しぶりに外食を解禁したという人も多いだろう。新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言を受け、4月末に始まったアルコールの提供制限は、途中短い解除期間はあったものの約5カ月間続いた。かつてない制約のなか、バーでは近年トレンドの「モクテル(ノンアルコールカクテル)」に本腰を入れて取り組み、営業を継続する店が出てきた。

モクテルは世の中のアルコール離れに対して、お酒を飲まない人に向けてマーケットを広げてきた。しかし、今回はお酒好きに向けたモクテルを考えなければならず、味づくりには今までと違う視点が求められたようだ。この期間、営業を続けた都内のバー2軒にモクテル営業の手応えを聞いてみた。

「ロックフィッシュ」 ノンアル版ハイボール完成

銀座に店を開いて今年で20年。いつしかハイボールの聖地と呼ばれるようになった「ロックフィッシュ」では、客の9割がハイボールを頼む。ノンアルコール営業期間は、新作「あのハイボール」(900円)を含む7種類のモクテルで休みなく営業を続けた。

右の3種からスタートしたモクテルは、最終的に7種まで増えた

「あのハイボール」のオーダーが入ると店主の間口一就(まぐちかずなり)さんは、いつもどおり冷えた角瓶を取り出し、変わらない手順で作り始めた。角瓶の液体はもちろんウイスキーではない。間口さんが自家製したモクテル版ハイボールの「素」だ。

「前々からノンアルハイボールの構想はあって、レシピは頭の中にほぼ出来上がっていました。するすると形にはなったんですが、もともとお酒を飲まない人に向けて考え始めたレシピだったので、味の調整やアルコールの厚みと丸みを感じさせる工夫はこの5カ月、ずっと続けてきましたね」

自家製のノンアルハイボールの「素」は角瓶にスタンバイ(画像提供:ロックフィッシュ)

「素」となる原液を自家製して炭酸で割るスタイルは、はやりのクラフトコーラで最近見かけるようになったが、ハイボールにはアルコール感を求められる点が大きく違う。また、ドライなハイボールに慣れたお客さんの舌には甘味もご法度。完成した「あのハイボール」を見ると、見た目の色や透明感にも間口さんは高い完成度を追求してきたようだ。ノンアル営業の長期化も手伝い、レシピは5バージョンまで調整を重ねたという。

それにしても「素」の原液はいったい何からできているのだろう。飲んだだけでは、まったく想像がつかない。

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「バー ウェルク」 果物やハーブ、スパイス使ったモ