ライフステージ別 私たちの体に起こる変化
「まだ若くても、この先自分の体に起こる変化を知っておくことが大切」と産婦人科医の高尾美穂さん。年代別にやっておきたいことを教えてもらいました。
20代 2割以上の人が「やせすぎ」。"若さで乗り切る"は禁物
□BMIが18.5未満、25以上であれば、適正体重に近づける努力をする。
□栄養のバランスが偏りがち。食物繊維やたんぱく質も積極的に摂取する。
□ひどいPMSや生理周期の乱れがあれば、放置せずに、医師に相談する。
生理周期が定まる20代は将来のための大切な時期
仕事がきつかったり、睡眠時間が取れなかったり…無理をしてもどうにかなるのが20代。ひとり暮らしの人も多く、食事も偏った内容に。やせすぎの割合が多いのもこの年代です。やせすぎは生理に影響したり、卵巣機能の低下を招くことが分かっています。10代後半から20代の前半は、生理の周期が安定していく時期。そこで無理をすると、その後ずっと不安定になってしまう可能性も。若いからと、体に向き合わないのはNGです。
30代 後半からはエストロゲンが減少。「産後うつ」を経験する人も
□20代同様、適正体重を維持し、バランスのよい食事を取ることが妊活にも◎。
□産後は人生で最もホルモンバランスが乱れる時期。知識とケアが必要。
□2年に1度の子宮頸がん検診を推奨。罹患率が上がる30代からは特に大切。
出産後に女性ホルモンのバランスが大きく変化
仕事や恋愛の悩みが落ち着く人も多い30代。一方で、周りと比べ劣等感を抱くなど、自分なりの幸せを探してもがく時期です。女性の体に最も大きな変化を及ぼすのが、出産。産後の体は排卵が抑えられ、生理がありません。これは卵巣から分泌される女性ホルモン「エストロゲン」がなく、閉経後と同じ状態ということ。産後うつなどで"人生のボトム"になる人もいるほど。そして、30代後半からはエストロゲンが減少し始めます。
40代 家庭、仕事、介護…と多忙に。後半からは更年期が始まる
□生理不順など更年期症状の兆候を感じたら、一度専門医に相談するのがベター。
□40歳から2年に1度の乳がん検診を推奨。セルフ乳房チェックも習慣に。
□代謝が落ちて太りやすく。丈夫な足腰を維持するためにも運動習慣をつける。
□食事はバランスよく。エストロゲンに似た働きをする大豆製品も適度にプラス*。
*大豆製品の成分から産生されたエクオールがエストロゲンに似た働きをする。ただし腸内にエクオール産生菌を持っているかは、個人差がある。
PMSから更年期症状へ最後の"揺らぎ"の時期
責任ある仕事、子育て、介護など「役割」が増える40代。日本人の閉経の中央値は50.5歳なので、閉経前後5年を指す「更年期」に、自覚のないまま突入します。40代後半からは、エストロゲンの分泌量が急減。更年期の症状が現れるものの、PMSと区別がつきにくいというのが現状です。また、代謝が落ち太りやすくなる時期。太ると体に負担がかかったり、生活習慣病につながったりするため、運動習慣をつけることが大切です。
50代 閉経前後の揺らぎが骨や血管、メンタルにも影響する
□無理に体重を落とすと、筋肉まで落ちてしまうことに。適切な体重を維持する。
□閉経すると骨密度が低下しやすい。カルシウムやビタミンDの摂取、運動習慣を。
□更年期の不調改善に大切な習慣のひとつが、睡眠。1日7時間以上の睡眠を心がけて。
□閉経で喪失感を覚えるのではなく、安定した時間が来たと前向きに受け止めて。
"揺らぎ"から解放された穏やかな「低め安定期」
閉経を迎えると、女性ホルモンのアップダウンは落ち着きます。ただし、40年以上ずっと"エストロゲンがある状態"だった体は、"ない状態"に慣れていない。私たちは肌や髪で変化を感じますが、体の内側は骨密度や筋肉が落ちるなど、もっと多くの変化が起こっています。運動や食事で対策をしながら、体の変化を前向きに受け入れることも大切です。
産婦人科専門医。「イーク表参道」副院長。医療・ヨガ・スポーツを通じ「すべての女性によりよい未来を」届ける活動を行う。女性の心と体の悩みに答える著書『心が揺れがちな時代に「私は私」で生きるには』(日経BP)好評発売中。
(写真 窪徳健作)
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