
てんぷら屋に行くと、抹茶塩がテーブルに置いてあったり、てんぷらに添えて出てきたりすることがあるだろう。てんぷらのお供として今や定番化した抹茶塩だが、なぜお茶と塩の組み合わせなのかを考えたことはあるだろうか。抹茶が織りなす鮮やかな緑色が、料理に彩りを添えるということもあるが、それ以上に抹茶の原料である緑茶と塩は味わいの面でも非常に相性が良いからだ。
緑茶にはグルタミン酸などのアミノ酸やカテキン、タンニンなどが含まれており、それがうまみや甘味、渋味や苦味の元となっている。一方、塩にはうまみを強調し、苦味を抑え、甘味を引き立てる働きがある。緑茶に塩を加えると、結果としてうまみと甘味が強くなり、濃厚になる。信じられないという方は、試しに緑茶を飲む時、塩をひとつまみ入れたものと、そうでないものを飲み比べてみてほしい。その味わいの変化にきっと驚くはずだ。
うまみと甘味の強い抹茶塩は、あると非常に便利な調味塩なのだが、一部のお茶の名産地を除き、てんぷら以外の用途で使われているのをほとんど見かけたことがない。それは、おそらく抹茶塩に含まれる甘味が原因ではないかと推測する。この甘味が「料理には合わないのでは」と思われているからではないだろうか。
しかし、抹茶塩にはさまざまな用途がある。イカなどの刺し身との相性はかなり良い。かむほどにねっとりとしたイカの食感とうまみ、甘味は、抹茶塩と絶妙にマッチする。オリーブオイルと合わせて豆腐にかけてもおいしいし、火を通した白身魚ともよくマッチする。ポテトフライにかけたり、おにぎりにしたり。食材や料理にうまみと甘味が含まれてさえいれば、抹茶塩と同化し濃厚に変化する。
抹茶塩は店頭でも購入できるが、自分好みの抹茶塩を自宅でも簡単に作ることができる。甘味を抑えたければ、緑茶は高級品でないものを選ぶといい。作り方は①緑茶をミルサーなどにかけて粉末状に砕く②それをお好みの塩と1:1程度の割合で交ぜる――だけ。料理にかけて使う場合には、緑茶を多めに、また、主に調味料として使うなら塩を多めに配合するといい。