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東日本大震災をはじめ数々の災害で、避難所運営の主体に女性がおらず、細かなニーズに配慮できていないことが顕在化した。地域防災や災害への対応を担う自治体において大きな課題だ。防災分野に女性の声を反映する動きが、自治体の間で広がり始めている。

市区町村の防災担当部署「女性ゼロ」6割

「女性が防災部局の職員になるには、家族の理解がないと難しい」「希望したくても、出産などで迷惑をかけるのでは、と思ってしまう」――。

7月、公務員や民間企業のメンバーによる「よんなな防災会女子部」が行ったイベントで、こんな声があがった。参加したのは自治体の防災部職員やOB・OGら約60人だ。

イベントのテーマは、内閣府が5月に発表した防災に関する調査結果だ。調査によると、全国1741の市区町村のうち6割で、防災・危機管理部局の女性職員がゼロだった。防災担当部署に配置されている女性職員の割合は、全国平均で9.9%にとどまる。

災害時は泊まり込みを含む緊急業務が発生することから、出産・子育て世代の女性を配置しづらい、といった事情がある。イベントの参加者からは家庭との両立の難しさや「防災部局に配属されても、女性が1人だけだと、発言を『個人的な意見』と捉えられてしまうことがある」などの声も寄せられた。

職場の防災グッズについて意見を交わす、「さかいで131(ぼうさい)おとめ隊」のメンバー(香川県坂出市)

職場の防災グッズについて意見を交わす、「さかいで131(ぼうさい)おとめ隊」のメンバー(香川県坂出市)

女性ならではの問題が顕在化

女性職員の配置がゼロや少数の自治体では、災害直後の救出活動や避難所運営は男性が主体となることが多い。そのため、東日本大震災や熊本地震の際には、女性ならではの問題が顕在化した。

宮城県石巻市の母親らで組織するNPO法人「やっぺす」の柏原としこさんは、東日本大震災時に避難所を訪れた際、運営者が男性ばかりだった、と振り返る。「生理用ナプキンにも夜用や羽つきなど色々ある。物資を配るのが男性職員だと、サイズや形の希望を言いづらい」と感じたという。

女性や子どもを支援するNPO法人「ウィメンズネット・こうべ」の正井礼子さんも、東日本大震災の2カ月後に訪れた宮城や福島の避難所で、物資として届いた下着がテーブルに山積みされているのを目にした。「自分に合ったサイズを探すには、プライバシーに欠ける光景だった」

阪神大震災時には「県職員がセクハラの相談を受けて避難所を訪れたところ『加害者も被災者だから大目に見てやらんかい』と男性リーダーにあしらわれた、という話も聞いた」という。「日ごろからジェンダー平等の社会づくりをしないと、災害時にはより深刻な形で現れる」と、自治体の防災担当部署や避難所運営への女性参画を求める。

災害対応に従事する職員の立場で「小さな子どもや高齢の親を持つ職員が、安心して家族を預けられる体制を整える必要がある」と話すのは、2016年の熊本地震で南阿蘇の避難所に派遣された岐阜県庁職員の河村愛さんだ。被災地の職員らが、離れた避難所に家族を残して災害対応にあたる姿を見て、強くそう感じたという。

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