近年は芸能人も参戦しレッドオーシャン化が著しいユーチューブ業界で、バズマフはチャンネル登録者数が11万人を突破した(10月初旬時点)。白石さんは「結果として動画の数字が伸びたらうれしいしモチベーションにつながる。けれど、ユーチューブは農林水産業をもっと親しみやすく伝えるための手段にすぎない」と明かす。手段と目的を履き違えることがないよう、気を引き締めている。

広告代理店なども通さず職員が手作りした動画がここまで愛されるようになった理由については「大臣直轄で、のびのびと自由にさせてもらえたことが大きかった」と強調する。そのうえで「職員が顔を出して国民の皆様に直接情報を届けるのは、他の省庁が今までやってこなかったこと。そこを『新しい』と思ってもらえたのではないか」と話す。松岡さんも「今はそれほどでもないが、当時は堅いイメージのある国家公務員と実際のやわらかい動画とのギャップが他のチャンネルとの差別化につながり目をつけてもらえた」と分析する。

「やわらかい広報」のトップランナー

再生回数でいえばバズマフのツートップ、お互いの関係を「戦友」と位置付ける白石さんと松岡さんは今年の4月、ともに広報室へ異動となった。ユーチューブによるPRを成功させた先駆けとして、これまで以上に期待がかかっている。

「プロジェクトの達成具合はまだ10%ぐらい」と謙遜する

「ルールや政策を作って終わりではなく、それを真摯に国民の皆様に伝えるまでが僕たちの仕事。もちろん堅い言葉で伝えることも必要な一方で、情報を欲しがっていない人にも届けるプラスアルファとしてバズマフがある」と白石さん。松岡さんは「バズマフを通して本業を知ってもらい、そこからさらに実際の行動につなげてもらうことが大事」ときっぱり。施策をPRするツールとしてバズマフを取り込んでいきたいと口をそろえる。

2人の上司に当たる安川徹・広報室長は「伝えるという部分は、既にとてもうまくできている」と評価。「食料自給率の向上や国産食材の消費促進といった解決策を見いだすのが難しい課題にチャレンジして、政策の成果をしっかり出すところまで頑張ってほしい」と、伸びしろに期待する。

バズマフの快進撃は、他の省庁や周りの職員にも刺激を与えている。同じような取り組みをしたいと勉強会に呼ばれることや動画のコラボ、ネタの持ち込みも多くなった。新たにユーチューブチャンネルを開設したり、SNSでくだけた表現を使ったりする行政機関も少しずつ増え、農水省の「やわらかい広報」が広がりつつある。

白石さんに現時点でのプロジェクト達成度を聞いてみた。返ってきた答えは、控えめとも思える「10%ぐらい」。「まだきっかけぐらいにしかなれていない。農水省が対象とする食の分野は、一番命につながっている分野。国民の命を支えるという使命を担う農林水産省が、国民の皆様にもっと身近な存在になれるよう、しっかり役に立つ情報を出していきたい」。やわらかい広報のトップランナーとして、白石さんはまだまだ走り続ける。

(ライター 橋口いずみ)

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