変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

インフィニティ(東京・豊島)の創業経営者であり、世代・トレンド評論家として発信しつつ立教大学大学院で客員教授も務める牛窪恵さん(インフィニティ提供)

インフィニティ(東京・豊島)の創業経営者であり、世代・トレンド評論家として発信しつつ立教大学大学院で客員教授も務める牛窪恵さん(インフィニティ提供)

結婚や出産で女性が職場から去っていったのは昔の話。ライフイベントも経ながら働き続けていくのが、令和の女性たちに多いワークスタイルだ。とはいえ、ロールモデルが身近にいなくて先行きが見通せなかったり、働き始めた頃とは違って「成長」を実感できなかったりで悩むことも。先輩女性たちはどんな体験をバネにキャリアを築いていったのだろうか。活躍する女性に、自身を今に導いた「あの頃」や迷いを脱する助けとなった「こんな言葉」を語ってもらう。

(2)「失敗は勲章」ローソン銀出向 女性MBA管理職の転機

今回は「所さん!大変ですよ」(NHK総合)をはじめ、テレビ番組でのレギュラー出演も多い牛窪恵さんにご登場いただく。

牛窪さんは、企業のマーケティング支援をメーンとする会社、インフィニティ(東京・豊島)の創業経営者。世代・トレンド評論家として発信もし、立教大学大学院の客員教授を務める。政府の審議会や研究会のメンバーとしても多忙な日々を送ってきた。

一連の活動の傍ら、デビュー作となった「男が知らない『おひとりさま』マーケット」(2004年)から「若者たちのニューノーマル Z世代、コロナ禍を生きる」(20年)まで共著も含め20冊以上の著書を執筆。本人は「マーケティングライター」という肩書が、一番しっくりくるという。

マーケティングで社会をハッピーに

私はマーケティングが好き。マーケティングは市場を創造する価値創造のための活動です。競争の激しい市場は「レッドオーシャン」と呼ばれますよね。新たな市場を創造できなければ、皆が群がってきているレッドオーシャンで血で血を洗うような厳しい戦いを余儀なくされてしまいます。けれど、皆がまだ目をつけていないことをブルーオーシャン市場として提案できれば、「この分野なら、うちの会社にもできる」「私ならやれる」という風に新しい可能性が広がっていく。ビジネスに関わっていなかった人や(パイを奪い合う)椅子取りゲームに負けていた人にもチャンスが生まれます。

「それで社会がハッピーになれるなら、ベストですね」というのが私の価値観です。自分たちが手掛けるもので価値創造をしていきたい。そう思っています。

日本の場合、個人消費はGDP(国内総生産)の半分超を占め、景気への影響も大きい。だが、その潮目は「安い」といった分かりやすい理由だけでなく、フワっとした「気分」で変わることも。ヒット商品の開発は「千三つ(成功するのは1000件に3件)」ともいわれるように、消費の鉱脈探しは容易ではない。とらえどころのない社会の変化をどうつかんでいるのだろうか。

個人的には、愚直に日常的な行動観察を心がけています。コロナ禍でいまは完全にはできなくなっていますが、例えば新しいスポットができたなら、開業後なるべく早くそこに出かける。そして、どういう人たちがどんな服装で来ていて、どういう速度で歩いて何を話しているか、スマートフォン(スマホ)で何を見ているか、そういったことを一つ一つ観察しています。文化人類学で培われた「エスノグラフィー」と呼ばれる手法ですね。そこに「気づき」が必ずある。その気づきから考えた仮説をまずはグループインタビューや(アンケートなどの)定量調査で会社として検証していきます。

いまは情報が行き渡るのも早い。普段から消費者の行動を見ていないと変化はつかめません。日ごろの情報収集ではネット上の記事にしろ雑誌などにしろ、なるべく幅広くインプットし、仮説を立てることを心がけています。

会社としては、スタッフにSNS(交流サイト)上のコミュニティや、場合によってはリアルの趣味サークルに参加してもらうことも。特に若い人がそこで何を考え、どういった距離感で人とつながっているのかなども見ています。単に何が流行っているかや、何を消費したかだけでなく、親御さんとの関係や仕事観など、その人の価値観に関わる深い話も聞くようにしています。

「感性寄りの嗅覚」と「物事を客観視する目」の双方が大事

会社が20周年を迎えた今もスタッフ任せとせず、自身も第一線で消費を見つめる。「受容と共感が大事」と消費者の心へのアプローチを試み、得られたことを客観データで裏付ける形で変化するトレンドを複眼的に読み解いてきた。「気分はバブリー」と本来の自身の趣味や志向は笑いのめして相対化し、客観的な視点が大事だと説く。

現場で調査をやっていると、感覚的な兆しはかなり早い段階で見えてくるものです。次に何が来るかも、欧米の動向を見ていればある程度は分からなくもない。ただし、世に出すタイミングがすごく難しい。発表が早すぎると一般の人にはピンとこず、スルーされてしまいます。タイミングをつかむ際には、感性寄りの嗅覚がないと難しいですが、世に出す時期は物事を客観視する目がないとダメ。自分1人だと、なかなか俯瞰(ふかん)した感じは分からない。

弊社には、これまでに登録してくれたフリーの方も含めて女性ばかり40人弱のスタッフがいます。個人で活動するのでなく、会社として好奇心旺盛なスタッフと一緒に動いていることは、そうした面でも大いにプラスになっています。ただし、マーケティングの世界はこの10年で大きく変わり、脳の反応を可視化するニューロマーケティングなどの研究も進んでいます。好奇心だけでは追いつかない。そうした新しい領域も学びたいと立教大学大学院に通い、19年に経営管理学の修士(MBA)を取得しました。

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック