女子野球が盛り上がりつつある。競技人口が右肩上がりで、昨夏には全国高校女子の決勝が史上初めて甲子園で開催された。だが男子と比べれば野球で食べていける人はほんの一握りだ。女子野球選手の活躍の場を広げようと取り組む人たちを追った。
女子野球に開かれた甲子園 競技人口は大幅増
2021年8月、高校球児の聖地、甲子園球場で初めて全国高校女子硬式野球選手権大会の決勝戦が行われた。97年に大会が始まって25回目、夢のまた夢の門戸がついに開いた。
今夏も2年連続で決勝戦は甲子園で開催された。試合を制した横浜隼人高校の田村知佳監督は、プロ野球選手だった父の影響で小1から野球を始めた。高校は強豪校の国学院久我山の男子野球部に入部。女子は1人だった。日本高校野球連盟の規定から、女子は危険防止のため男子野球部の公式戦に出られなかった。

「力負けするのは当然と割り切っていた。やらせてもらえるだけでも十分だった」。日本体育大学を卒業後、横浜隼人高校に体育教師として着任した。軟式チームの発足を経て約10年前に女子硬式野球を創部した。平日の日中は教壇に立ち、放課後や週末は女子野球部監督として試合や練習をみる。
高校の男子野球部が減少する中、女子は創部が相次ぐ。ここ5年で倍増し、全国高等学校女子硬式野球連盟の加盟校は50校を超えた。人口増加を支えるのは、田村監督のように小さい頃から地域の野球チームなどで腕を磨いた女子部員たちだ。
11月3日、米大リーグなどで活躍したイチロー氏が率いる草野球チームが東京ドームで高校女子選抜と対戦を行うなど、取り巻く状況は変わってきた。
高校だけではない。全日本女子野球連盟によると、全国の中学生以上のチーム数は15年度の62から21年度は102に、競技人口も1519人から2533人に増えた。

課題は「高校卒業後の受け皿が少なく、野球を続けたくても場所が少ない」(田村監督)ことだ。