検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

「竜のすみか」伝説とは? スロベニアの洞窟を歩く

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

そこに行けば、長い尾を持つ"竜"に出合えるかもしれない。中央ヨーロッパの国スロベニアにあるポストイナ洞窟だ。川が流れるこの洞窟は、世界で最も生物多様性に富んだ洞窟とも言われ、コオロギやヤスデ、甲虫などに交じって、「竜の子」と伝えられてきた半透明の生物も暮らしている。

その竜の子は、正式名称をホライモリという。地下世界に適応したこの両生類は、体長30センチまで成長し、手足を再生する能力を持つ。最大100歳まで生き、何も食べずに10年以上生きることもある。科学者たちは、ホライモリの再生能力と適応力の過程について知るために、その膨大なDNAを調査している。

「ここまで竜に近い生物は、ほかにいないでしょう」と、ポストイナ研究所の生物学者カタリナ・カンドゥッチ氏は言う。

目を持たないホライモリについては今でもわかっていないことが多く、国際自然保護連合(IUCN)はこの生物を危急種に指定している。生息地は、イタリア北部からアルバニアまで、アドリア海をぐるりと取り囲むディナル・カルストの狭い地域だけだが、そこにいったいどれだけの数が生息しているのかすらよくわかっていない。

確実にわかっているのは、ホライモリの生息地が主に化学肥料などによる汚染にさらされていることだ。浸透性の高い岩を通って地下に入り込んだ汚染物質は、長寿のホライモリの体に吸収される。彼らについて学び、その保護活動を支援するには、ヨーロッパの洞窟で最も観光客が多いポストイナ鍾乳洞公園を訪れてみることだ。

ヨーロッパ屈指の観光地

鍾乳洞までは、スロベニアの首都リュブリャナから1時間とかからない。年間4000万人を超える観光客の多くは90分のツアーに参加し、純白に輝く石筍(せきじゅん)を見ながらシャンデリアに照らされた洞窟を通り、最後にホライモリの姿をちらりととらえ、その保護活動について学ぶ。

しかし、人混みを避けて、本来の生息地で竜の赤ちゃんを見たいという人は、ランプでともされた洞窟の奥深くまで、自然環境を傷つけないように探検する限定ツアーに参加することもできる。洞窟アドベンチャー、歴史の勉強、脱出ゲームの要素をすべて合わせたような3時間のツアーは、岩の懸垂下降、ボート、洞窟探検を体験しながら、ホライモリの生息地を目指す。

自国の洞窟遺産への誇りと空想上の動物に対する強い思いが、スロベニアの人々の保護活動を支えている。そのかいあって、ポストイナ鍾乳洞の研究所は、最近になって30匹のホライモリを新たに繁殖させることに成功したと発表した。記録的な成功だ。

竜は昔から伝説や文学の題材になってきたが、スロベニアはそれを新たな高みにまで引き上げた。首都リュブリャナにかかる橋は、雄たけびを上げる竜の像が設置されていることで有名だ。ほかにも、町中の壁画や下水道のふたにまで描かれるほど竜が大好きな国民だが、それも無理はない。世界各地にみられる「カルスト地形」の語源になったスロベニアのクラス地方には、陥没穴や洞窟、暗い穴がたくさんあり、長年の間、地元の住民たちは、そのなかに竜がすんでいると信じていた。

冬に洞窟から流れ出る温かい霧は、巨大な竜が吐く息だと考えられていた(実際には、洞窟内の安定した気温による現象)。洞窟の川が増水し、白っぽい奇妙な生き物の溺死体が外に流れ出ると、それを見た人々は竜の子どもに違いないと考えた。そして、なかにもっと大きな親が潜んでいるのではと恐れた。

「洞窟は危険で暗く、異世界へとつながる入り口でした」と、ポストイナのガイドを務めるケビン・クルン・バレンチッチ氏は言う。「地下の世界では、竜を退治するのと同じように、自らの恐れと向き合って戦わなければなりません」

スロベニアの竜を探して

体長30センチメートル、ランプのあかりに照らされてネオンのように輝くホライモリは、地下の透明な水の中を泳いでいたが、すぐに岩の下に身を隠してしまった。普段あまりエネルギーを使わない生き物にしては、素早い動きだ。ツアーに参加した私たちの小さなグループは、洞窟の中を歩き、懸垂下降し、太古の昔から流れる川沿いのトンネルを進み、ホライモリが見られる場所へたどり着いたところだった。バレンチッチ氏によると、このツアーに参加した人のほとんどは、最低でもちらりとホライモリの姿を見られるというが、保証はない。

自然界で孵化(ふか)できるホライモリの卵は、500個のうちせいぜい2個だけだという。ポストイナの研究所では、43個のうち少なくとも30個が孵化に成功した。同研究所は2016年にもホライモリの卵を孵化させているが、今回はその時の2倍の孵化率だった。研究チームによる丁寧な世話が成功のカギであるという証だ。文字通りの意味でも、比喩的な意味でも、暗闇の中を手探りするような状態での挑戦だった。「これまで誰もやったことがない仕事です。グーグルで検索して出てくるようなことではありませんから」と、カンドゥッチ氏は言う。

この研究は科学界を驚かせ、欧州連合が、欧州における自然保護活動を表彰する「ナチュラ2000賞」の2022年度の最終候補に選ばれた。

研究室にいないときのバレンチッチ氏は、明らかに洞窟ツアーを率いることを楽しんでいるようだ。泥だらけの丘を滑り降り、かがみこんで洞窟にすむエビを探し、完全な暗闇の中で静かなひと時を過ごす。

チームの別の研究者であるプリモズ・グネズダ氏は言う。「人は皆、竜を見たいと思っているんです」

(文 REBECCA TOY、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2022年12月20日付]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_