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クライミング界のスーパースター 未踏の崖を制す

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ナショナルジオグラフィック日本版

高さ1200メートルと世界最高レベルの岩壁の初登攀(とうはん)に、有名なクライマーであるアレックス・オノルド氏とヘイゼル・フィンドレー氏が成功した。2022年8月16日の昼、2人は不安定な岩や寒さ、突然の嵐などと闘いながら頂上に到達した。

2人が挑んだ岩壁はグリーンランド東部、スコアズビー湾にある氷に覆われたフィヨルドの海からそそり立っており、地元ではイングミコルティラク(Ingmikortilaq、グリーンランド語で「離れているもの」という意味)と呼ばれている。今回オノルド氏らが登攀に成功するまでは、世界で最も高い未登攀の海食崖のひとつとして知られていた。

オノルド氏は、ベースキャンプから衛星電話でインタビューに応じ、「私たちは、地図から『飛び出して』ここに来ました」と話した。彼らが使った海図には、イングミコルティラクがあるフィヨルドに関する詳細は記されていなかったからだ。「私がこれまでに挑戦してきた初登攀の中でも、最も困難なものの1つでした。非常に危険で、ストレスも大きかったです」

クライミングと科学研究

彼らの遠征には、クライミングとともに科学研究という目的もあった。現在、グリーンランドの氷床は驚くほどのペースで融解しており、科学者たちはこの地域の氷床が気候変動の指標になると考えている。しかし、氷床がある地域の地形は険しく、調査は非常に困難だ。

今回、クライミング界のスーパースターであるオノルド氏、フィンドレー氏、そしてプロの登山家マイキー・シェイファー氏の3人は、北極圏監視評価プログラム(Arctic Monitoring and Assessment Program)で働くフランス人の氷河学者ハイジ・セべストル氏の調査に協力するため、スコアズビー湾の近くの台地にあるレンランド氷冠を訪れることにした。この地域は標高が高いため気候変動の影響を受けにくいと推測されているが、その裏付けとなる地上のデータが不足している。

「グリーンランド東部は北極圏の中で最も辺ぴで、研究が進んでいない地域のひとつなので、今回の調査は科学的に非常に重要です」と、セベストル氏は言う。「この地域の科学的データがどうしても欲しいのです。フィヨルドや氷河、氷床を調べることで、科学界に多くのデータをもたらし、非常に大きな貢献をすることができます」

冒険の前の冒険

調査地であるレンランド氷冠を訪れるには、プール・ウォールと呼ばれる高さ460メートルの一枚岩を登らなければならない。オノルド氏が評価したプール・ウォール登攀の難易度は5.12c。これは、経験豊富なクライマーにとっても難しいことを意味する。気象条件を考えれば、実際の難易度はこの数字よりも高かったと、オノルド氏は言う。「気温マイナス6℃の吹雪の中を登ったのですから」

セベストル氏はクライミングの経験はあったものの、ビッグウォールと呼ばれるクラスの岩壁を登ったことはなかったので、プール・ウォールに挑戦してみないかと聞かれたときには「まさか!」と思ったという。「けれども、プール・ウォールで行う調査のことを考えると、自分が登ることは理にかなっていると考え直したのです」

3人のプロのクライマーが先に岩壁を登り、セべストル氏ともう1人のメンバーのためにハーケンを打ち込み、ロープを固定した。セべストル氏は恐怖に耐えながら氷原から数百メートルの高さを登り、一定の間隔で止まっては岩石コアサンプルを採取していった。これらのサンプルは、気候学者がこの地域の過去の氷河の歴史を再構築するのに役立つはずだ。その結果にもとづき、グリーンランドの氷床の融解に伴う将来の海面上昇を、より正確に予測することが可能になる。

プール・ウォールの頂上に到着した探査チームはレンランド氷冠の端に出た。それから5日間、彼らは雪と氷の深さと密度をリアルタイムで測定する特殊なレーダーを搭載したソリのような装置を引きずりながら一帯を調査した。

セベストル氏は、「今回の探査では、グリーンランドの未踏地域の『健康診断』を行うために15種類の調査を行いました」と言う。崖に温度センサーを設置したほか、3Dレーザーを使って氷河内部をスキャンしたり、海水の温度と塩分濃度のデータを収集するために米航空宇宙局(NASA)が設計した特殊な浮きをフィヨルドに流したりした。

人工衛星から得られるデータのおかげで、「ここで起きていることはおおよそ見当がついている」とセベストル氏は言う。「けれども、人工衛星が何基あっても、ヘリコプターや飛行機でどれだけ科学データを収集しても、地上で長靴を履いてデータを収集するのに及ばないことがあるのです」

苦労して得られた情報は、NASAだけでなく欧米やアジアの研究機関の研究者と共有される。データからどんなことが明らかになりそうか、セベストル氏は詳しくは教えてくれなかったが、1つだけ確実そうなことがある。この地域の氷河は、グリーンランドのほかの地域と比較して、融解の影響が少ないように見えるのだ。セベストル氏は、「この地域は、まだ気候変動の影響を受けていない最後の砦(とりで)の1つかもしれません」と言う。

イングミコルティラクの初登攀

科学調査に協力した後、3人のクライマーたちには魅力的な報酬がついてくる。イングミコルティラクへの挑戦だ。

「ヘイゼルも私も、自分たちのこれまでの冒険の中で、最も危険な挑戦だと思っていました」と、オノルド氏は衛星電話でのインタビューで語ってくれた。「不安定な岩だらけの危険な崖を1200メートル近く登り続けるのは、永遠のように感じられました」

チームは、頂上に最も到達しやすそうに見える北東尾根を進むことに決めた。登攀の中間地点までは、5日がかりで固定ロープを頼りに登った。オノルド氏とフィンドレー氏は、ここから2日をかけて頂上を目指した。彼らは水とフリーズドライの食料を背負って登り、岩棚で一晩を過ごした。

イングミコルティラクは、クライマーたちが事前に予想していたよりもはるかに困難で危険な地形だった。300万年前の片麻岩からできているこの極北の岩壁は、風化と、凍結と融解が繰り返し起きたために、崩れやすい不安定な岩だらけだったのだ。

オノルド氏とフィンドレー氏は、崖から垂れ下がる巨大な岩を巧みに迂回していった。手でつかんだ岩が砕けてしまうこともしばしばあったし、大理石のようにツルツルしていて、つかむのにかなりの力を要する岩もあった。常に滑落の危険と隣り合わせだった。ロープがあるので滑落しても命を落とすことはないかもしれないが、大けがをするおそれがある。

オノルド氏は、「この北向きの岩壁から抜け出して、山頂で暖かい日差しを浴びたときには、2日間にわたる絶え間ないストレスから解放されてほっとしました」と言う。しかし、衛星電話のインタビューを切り上げる頃には、彼にとってイングミコルティラク登攀の苦労や危険はすでに過去のものになっているようだった。「そのうち、ヘイゼルも私も、この経験を懐かしく思い出すことでしょう」

(文 Andrew Bisharat、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2022年8月24日付]

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