「圧倒的な熱量や行動力を持つ『ダイナモ人』はともすると、単にワガママで扱いにくい人間のように捉えられがち。ですが、この本では大事なのは『利他の精神』だと書かれていて、それとDeNA社内でよく言われる『良質な非常識』は重なると思ったのです。単なるばくち打ちや自分がやりたいからやる、ではなく、これまでの『常識』が培われた時代背景や文脈を理解しつつ、あえて非連続に変えるポイントを見つけ、試行錯誤しながら『非常識』にチャレンジしていく。そのために、我々が行動規範にしているのが、顧客や社会、市場が求めている本質的価値とは何かを突き詰めることです。それは、この本でいうところの『利他』につながります」

ゲームプランナー時代に試行錯誤しながら、顧客目線で考えることを学んだという小川さん

顧客が求める本質的価値に向き合うーー。それがいかに「言うは易し、行うは難し」であるかは小川さん自身も経験した。入社して「ゲームプランナー」として働き始めた頃は、「自分の力で面白い企画を考えてやる」と息巻いていた。締め切りギリギリまで1人で考えこん身の企画案を出すものの、全く採用されず、周囲から「それってユーザーにとって何がいいの?どういう価値提供になるの?」と問われ続けたがピンとこなかった。そんな中でいきなり大きなイベントの責任者に指名された。

「ものすごいプレッシャーの中で、自分が面白い企画を出すことよりも、ユーザーにとって一番面白いものとは何かだけに集中して、なりふり構わず周りの人にも聞いて回りました。自分の成果や成長は二の次で、『顧客のため』を徹底した結果、イベントは成功し、結果的に僕自身も一皮むけることができた。そして、顧客がどんな生活をし、どんな隠れた課題を持っているかを見つけていくことは、難しいけれども一番大事なことであり、それができれば自分自身も楽しいのだと腹落ちしました」

「会社を変えるのはトップだけじゃない」

DeNAをはじめとするメガベンチャーは、成長意欲の高い就活生に人気で、いかにもダイナモ人が活躍できそうな組織に映るが、小川さんは「日系の大手は組織が硬直的でセンスが時代遅れ、ベンチャーはその逆」という決めつけには警鐘を鳴らす。

「活力がある組織かどうかは、会社の規模や歴史とは関係ありません。大企業が今の地位を築くまでには、さまざまな先人の努力があり、その組織の中には多くの知恵が詰まっています。ただ、時代の変化にうまく対応できない会社があったというだけ。一方でベンチャーは変化のはざまでゼロからスタートできたので、アドバンテージがありました。でも、ゼロから作るより、変化する方が実はずっと大変なのです。今イケてると言われているベンチャーだって、気を抜くと5年後10年後には活力のない組織になってしまうかもしれない。就活生には大企業かベンチャーかではなく、個々の会社をしっかり見てほしいですし、本質は変化し続けられるかだと思っています。そしてその変化は自ら起こすものだと認識してほしい」

本の中で小川さんが若手に最も読んで欲しいポイントも「会社を変えるのはトップだけじゃない」と書かれた部分だ。

「『うちの会社イケてない』と愚痴ることほど、ダサいことはない。愚痴るくらいなら、自分がダイナモになって会社を変えようよと。そういう気概を持つことこそが、ダイナモ人への一歩だと思います」

(ライター 石臥薫子)

企業変革を牽引する新世代リーダー ダイナモ人を呼び起こせ

著者 : 知識創造プリンシプルコンソーシアム
出版 : 日経BP
価格 : 2,200 円(税込み)