「決められたルールのもとで100点に近い点数をたたき出せるのが、かつての『優秀』な人材だとすれば、『ダイナモ人』は対照的に、人がまだ気づいていない困りごとを自分で見つけ出す人。そしてその解決のために、時には計画や既存のルールに過度に縛られずに、人を巻き込んでいける人です。DeNAが考える『優秀』の定義もまさにこれだと思っています。弊社は学生の間で『知的体育会系』と呼ばれたりして、ロジカル思考が重視されるコンサル的な風土と見られがちなのですが、実はロジックと同じくらい共感や熱量を大事にしています」

欲しい人材は「ダイナモ人」。だが小川さんは、必ずしも入社時点で「ダイナモ人」である必要はなく、DeNAという会社自体がこうした人材が育つ「エコシステムでありたい」と話す。同書でも「ダイナモ人」の資質は先天的なものではなく、後天的に開発・育成できると書かれている。

「ダイナモ人」育成へ、社内コンペや起業支援

ではDeNAの「ダイナモ人」育成のエコシステムとは何なのか。小川さんによれば、それは一言で言えば「チャレンジングな環境」だという。

「新卒には特に、達成できるかどうか五分五分の仕事を任せます。試行錯誤する中で、周囲の力を借りつつ、熱量や行動力を発揮する経験をしてもらうのです。当然失敗することもありますが、大事なのはミスなくやれるかどうかではなく、失敗すらも糧にしながら自走できるようになること。さらに変化のスピードがどんどん早くなる中で、会社自体も新しい領域の事業に次々チャレンジしているので、全く違う事業部への異動も大歓迎。社員が自分主導でキャリアを形成できる仕組みも作っています」

「DeNAという会社自体が、ダイナモ人を育成するエコシステムでありたい」と語る

社員が自由に新規事業を提案する社内コンペも入社年次、経験は不問。DeNAは起業家輩出企業としても知られるが、2019年からは社員でありながら起業にチャレンジすることを会社が積極的に支援。事業案を固めるための調査からメンター陣によるアドバイス、資金調達まで支援する「DeNAデライトベンチャーズ」の活用も推奨している。

入社2年後の18年から人事部門に異動し、日々人材育成について考えてきた小川さんは、同書の中でダイナモ人の特徴として「利他の精神」が強調されている点にも、深く納得したという。

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「会社を変えるのはトップだけじゃない」