実家のガソリンスタンドでバイト、コミュニケーション術学ぶ
――1月に出した書籍(ダイヤモンド社「ゴゴスマ石井の なぜか得する話し方」)はそんなコミュニケーションに役立つテクニックが書かれています。石井さんの体験に基づくものなのですか。
「僕が実践していることはすべて、ガソリンスタンドで学んだものなんです」

――大阪のご実家がガソリンスタンドを経営しているんですよね。
「高校での3年間、大学での5年間、計8年間アルバイトをしました。すごいっすよ、ガソリンスタンド。発声、お客さまとのコミュニケーション、商売の基礎。いまの仕事につながるすべてがあった。まず、笑顔とあいさつ。大きい声を出すから自然と発声練習ができていた。ガソリンスタンドではずーっとラジオが流れていて、おしゃべりの勉強になった。お客様はおじいさんから赤ちゃんまで老若男女がやってくるから、あらゆる人としゃべれるようになる。危険物取扱者乙種第4類の資格も取りましたから、橋下徹さんみたいな危険物も扱える……(笑)」
――ゴゴスマは共演者が多いから、臨機応変な対応力が求められますね。
「5日間で計20人くらいの共演者がいます。初めての専門家もいらっしゃいますが、リラックスしてしゃべっていただくことが、一番伝わるんです。経営者だった父は『お客さん第一やで。愛想よくせえよ』『あいさつは早いもんがち』『謝るのはただや、プライドなんかいらんで』と言っていました。僕もこの仕事では見てくださる方が第一。だから僕が威張る理由などないんです」

――そのお父様が7年前に亡くなられました。葬儀には出ずにゴゴスマに出演されて。
「死ぬ直前までおもろかった。『おやじ、ありがとう!』と言ったら『まだ早い』と返されて、みなが大爆笑でした。そして、最期までうわ言のように仕事の話をしていたんです。父にならい僕も葬式に出ずに仕事をしました。そうしたらその日の関東の視聴率が最低の0.9%となってしまった。だれが霊(0)きゅう(9)車やねん、という話です。まる2年たった父の三回忌の命日に、母に父の形見のネクタイを持って行け、と言われて、それを締めて臨んだ。ごく普通のストライプのネクタイです。するとその日初めて、関東で裏のライバル番組の視聴率を超えられたんです。次にその父の勝負ネクタイをつけたのが地元大阪で番組放送が始まった21年3月15日でした」

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