塩分のとりすぎは、高血圧、脳卒中につながります。脳卒中は、脳血管性の認知症や寝たきりの大きな原因となります。ただ、食塩摂取量が多いという残念な共通点があったものの、日本食、地中海食の地域は、血圧は西欧食地域よりも低いこともわかりました。

「食塩摂取が多いのに血圧は抑えられた理由は、地中海食では野菜や果物を豊富にとることにより、食塩の害を打ち消すカリウムを豊富にとっているからと考えられます。一方、日本食は地中海食に比べて野菜の摂取量は少なかったものの、高血圧のリスク因子である肥満が明らかに少ないという利点がありました。それに対し、地中海食ではオリーブオイルを多用し、ワインを常に飲み、これが日本より肥満が多いことにつながっているのではないかと考えています。いずれにせよ、日本食や地中海食の良いところを取り入れるとともに、共通の欠点である食塩の過剰摂取を改善できれば、それが健康長寿のための理想の食事といえるでしょう」と家森さん。
「健康長寿を維持する長寿食」をテーマに研究を続ける家森さんが、結論として、みなさんにぜひ実践してほしいと勧めるのは「まごわやさしいよ」の食べ方です。
「ま」は豆や豆腐、「ご」はゴマなどの種実類、「わ」はわかめなどの海藻、「や」は野菜、「さ」は魚、「し」はシイタケなどのキノコ類、「い」は芋類、「よ」はヨーグルトや牛乳など塩の入っていない乳製品です。「腸内環境を整えることなどで注目されているヨーグルトですが、その利点はそれだけでなく、カリウムやマグネシウムを含むため塩分のとりすぎを打ち消し、脳卒中を予防してくれることにもあります」(家森さん)。予防栄養学のプロフェッショナルがお勧めする究極の食事法と「減塩」を、あなたも今日から意識してみませんか。

(図版作成=増田真一、写真=123RF)