次の課題は奨学金の確保だ。米有名私大の学費は年間500万~600万円。しかし、日本企業が提供する奨学金も増えてきており、有名私大独自の奨学金制度も年々充実している。開成からハーバード大に進学した起業家の大柴行人氏は「各家庭の所得に応じて、手厚い奨学金をもらえる。自分の場合、学費と生活費でみると、東大に進学するよりもハーバード大の方が安かった」と振り返る。

霞が関で石を投げれば、開成OB官僚に当たる

日本を支える人材を輩出してきた開成。現在の開成学園理事長は元財務次官の丹呉泰健氏。その前の理事長は武藤敏郎氏で、財務省の大物次官として知られた人物だ。東京・霞が関では「石を投げれば、開成OBの官僚に当たる」といわれるほど数が多い。運動会や文化祭を生徒が主体的に開催し、同級生だけでなく、先輩・後輩の絆が強い開成。「岸田さんの最大の強みは開成OBの官僚や政治家からなる応援団」(開成出身の官僚)という声もあるほどだ。

新校舎内にはホールもある

実は岸田内閣で新設の経済安全保障相に抜てきされた小林鷹之氏も開成出身。東大法学部を経て旧大蔵官僚となり、自民党の代議士になった。岸田首相とは派閥が違うが、開成の先輩・後輩にあたる。もう一人、首相秘書官となる嶋田隆・元経済産業次官も開成出身。次官出身者の抜てきは異例、首相の右腕として秘書官のまとめ役になるといわれる。新政権は「開成人脈」が担う勢いだ。

開成では、最近は起業家も増えている。マネックスグループ社長の松本大氏。ライフネット生命創業者の岩瀬大輔氏、freee創業者の佐々木大輔氏。最近ではメディアアーティストの落合陽一氏やクイズプレーヤーの伊沢拓司氏ら若手の活躍も目立つ。現在、創立150周年記念事業として校舎の再整備が進むが、野水校長は「多くのOBが多額の寄付をしてくれた。みんな開成愛が強い」という。

 開成の前身「共立学校」は明治4年(1871年)に創立された。初代校長は首相や蔵相を務めた高橋是清。明治から昭和にかけて活躍した日本を代表する政治家の一人だ。創立150年の記念の年に100代目の首相誕生は、開成にとっていい節目となった。

次世代に開成はどんな人材を送り出すのか。「東大など国内大学に進学しても、一度は若いうちに海外を経験してほしい。多様な世界でこそ人材は磨かれる」と野水校長は強調する。2代連続の国際派校長のもとで、開成は大きく変わりそうだ。

(代慶達也)

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