キレを感じる生酒、発酵途中ならではの発泡感も爽快

「イクラの親子カクテル」(1099円)
「しらすのふわ玉アヒージョ」(439円)

「極 生日本酒サーバー」も面白い。「生? それって火入れしていないってこと?」。次のドリンクを訪ねてきた女性スタッフに聞くと要領を得ない。仕方なく店長らしきスタッフに聞くと、「提携している蔵元から出来たての日本酒を仕入れ、それをサーバーから出す仕組みです」とのこと。こちらも飲食記者歴30年だ。

さらに突っ込んで「それって、冷蔵庫に入れていないと発酵が進んじゃうタイプのやつ?」と聞くと「そうです、だから口開けとそれ以降は、少しずつ味わいが変わってきますし、その面白さを楽しんで欲しいと考えています」。

うーん、なかなか渋い。最近、口だけで「生ワイン」などをうたう店が少なくないが、ここは本物の生酒だったわけだ。知る限り生酒をサーバーで出している店はないのではないか。日本酒好きでなければ、気付かないことだが、これは、なかなかポイントが高い。

実際に注文してみると、生酒独特の香りの良さ、キレを感じる。発酵途中ならではの、軽い発泡感も爽快だ。思わず、1合を2回注文してしまった。半合で549円、1合で989円。どうもここは、コスパ抜群なつまみずしを出して、少しお高めの酒で採算を取るという戦略のようだ。

それでも、いいと思う。料理もそうだが、いろいろなところに「楽しさ」がちりばめられているからだ。シメの料理もいろいろあるが、バカバカしくも面白いのが、「明日のためのしじみらーめん」(439円)。有名ブランドのカップ麺のほぼパクリだ。

トイレのドア。自動販売機風だが、商品は買えない

トイレもバカバカしい。店内の奥まったところにあるのだが、見た目は自動販売機。スタッフからは、「小銭を入れて入ってください」と言われるのだが、実態はフリーだ。

こうしたサプライズは、席に着いた時からある。席には卵の握りとガリが乗った小さなすしげたがあるのだが、これはあくまで食品サンプル。そこにモバイルオーダー用のQRコードがついていて、それで注文することも可能だ。箸の先端を覆う紙は「お味くじ」となっていて、「超大吉」というレアな結果が出ればドリンク一杯になる。なんとなくだが、「客を喜ばせてやろう。驚かせてやろう」という気合が店中にあふれている感じなのだ。

予約をすると、プレートが出迎えてくれる。奥に見えるのが、食品サンプルの寿司とガリ

経営するのは、飲食業や設計・内装工事事業、コンサルティング事業を展開するスパイスワークスホールディングス(東京・台東)。代表の下遠野亘氏は、「外食業界の鬼才」とも言われる人物。スシローを展開するFOOD & LIFE COMPANIESが力を入れているすし居酒屋「杉玉」の開発も下遠野氏のアイデアが源泉となっている。カタカナスシは、それをカジュアルダウンして、若い層を取り込んでいるという感じだ。

この店、オジさんにとっても居心地が悪くない。一人でもいいのだが、せっかくなら部下2人くらいを連れて、いろいろなすしと料理を楽しみたいところだ。予算はそんなに酒を飲まなければ、3人で1万2000円くらいか。せんべろ居酒屋に行くのもいいが、「俺はこんな店も知ってるぜ」と密かに自慢するには最適だ。ただし、予約は必須。

(フードリンクニュース編集長 遠山敏之)

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