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社員のキャリア形成支援の一環として、勤務時間の一部を通常業務以外の活動に充てる「社内副業制度」が注目されている。異動や転職なしに異分野の業務を経験でき、子育て中の社員などでも手を挙げやすい。女性視点を生かした多様なビジネスが生まれている。

新規事業のコンペ準備に、社内副業制度を利用

情報機器などを手掛けるリコーから2019年、下着ブランド「ランゴリー」が生まれた。手掛けたのは社員の綿石早希さんと元社員の江副亮子さんだ。インドの伝統柄を生かしたブラジャーなどを販売する。

試作品のブラジャー。インドの伝統柄を生かしている

同事業はリコーの起業家育成プログラム「トライバス」のコンペで選ばれ、事業化された。きっかけは10年、当時社員だった江副さんがインドに派遣された際の体験だ。「農村部では働く女性が少なく、日用品店の店主は男性。女性は恥ずかしい思いをして下着を買わなければならない」。デザインも質素なものばかりで、同じ女性として課題を感じたという。

その後、江副さんは夫の転勤を機に同社を退職したが、19年にトライバスに挑戦しようとしていた綿石さんと再会し、事業化へとアイデアが膨らんだ。

エンジニアとして働いていた綿石さんが、コンペ準備のために利用したのが、リコーが19年4月に始めた社内副業制度だ。就業時間の2割まで他部署で働けるもので、綿石さんも約4カ月間、業務時間の2割を充て準備を進めた。

21年3月に商品の販売を開始。現在、綿石さんは同事業に専念するが、デザイナーなど一部のメンバーは別の部署から社内副業として携わる。22年にはECサイトもオープン。現在は新型コロナウイルスの影響で日本で生産・販売しているが、今後はインド農村部の女性に委託する予定だ。

同社は「インドで下着という発想がユニークだった。成長市場でもある」(トライバス推進室)と、女性ならではの発想を評価。綿石さんの起業家としての将来性にも期待している。制度を活用することで社内で起業家を育てる狙いだ。

新たに立ち上げたアパレル事業についての打ち合わせをするリコーの社員ら(2日、神奈川県海老名市)

新たに立ち上げたアパレル事業についての打ち合わせをするリコーの社員ら(2日、神奈川県海老名市)

法政大学の田中研之輔教授(キャリア論)によると「社員のキャリア形成支援の一環で、社内副業を導入する企業は増えている」という。「社員が様々なスキルを身につける機会になる」。転職や異動を伴わず、ライフイベントに合わせながら緩やかに経験を積めるため、子育て世代や女性もチャレンジしやすい。

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