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地方に本拠を構える小規模自動車メーカーの代表格といえる光岡自動車(富山市)。多目的スポーツ車(SUV)「Buddy(バディ)」は納車まで2年待ちの状態が続く。ヨーロッパ風クラシックカーの表情を備えた、優雅なムードの乗用車で知られてきたが、「バディ」は一転、アメリカンなタフ顔。オフロードが似合いそうなゴツめのSUVだ。大胆にハンドルを切った理由を、渡部稔執行役員は「発案者自身が乗りたいクルマを作るのは、光岡の社風」と語る。

光岡の2021年の年間累計受注台数は1000台を突破した。100万台規模のトヨタ自動車に比べれば、ごく少ない数とみえるが、小規模メーカーの光岡にとっては、めったにない「大台」。登録車で1000台を超えたのは、1998年以来の23年ぶりだ。

光岡自動車のSUV「Buddy(バディ)」

光岡自動車のSUV「Buddy(バディ)」

06~17年の12年間の平均年間受注台数は約400台であり、1000台ペースは約2.6倍の伸びにあたる。渡部氏は「2018年11月に発売した創業50周年記念モデル『Rock Star(ロックスター)』で認知度が上がった。さらに20年11月に発表した『バディ』が支持を受けた」と、大幅増の理由を説明する。「バディ」は受注全体の6割強を占める稼ぎ頭に育った。

しかし、注文が想定以上に集まった結果、「バディ」の納期は約2年にまで延びている。当初は年間で150台の生産を予定していたが、受注は見込みの約5倍に達した。受注の多さを受けて、2倍の年300台に生産体制を増強した。

だが、「工場を広げたり、スタッフを増やしたりは、おいそれとはいかない」(渡部氏)。工場は富山にしかなく、作業は手仕事が多い。従来のモデルに比べれば、「バディ」は量産に向くが、それでも生産ピッチは急加速がきかない。

どうにか納期を縮めようと、光岡が頼ったのは、自動車車体架装メーカーのトノックス(神奈川県平塚市)と、三菱ふそうバス製造(富山市)。トノックスは光岡と同様に車体架装を手掛けている「地続き」の間柄だが、三菱ふそうのほうはバスメーカーに個人向け乗用車の製造を委託するという、思い切ったアライアンス(連携)だ。

「1970~80年代のアメリカンビンテージを意識した」(渡部氏)というのがデザインコンセプトの源流だ。あえて部分的にやぼったさを残し、カントリーロードを走るイメージを都会に持ち込んだ。従来のヨーロッパ寄りの路線からみると、筋違いとも映るほどの路線変更だ。

しかし、渡部氏は「当時のアメリカの時代感がカッコいいと以前から感じていた。方向性が変わったようにみえるかもしれないが、別にヨーロッパや従来路線への執着はない。自分がワクワクしたいから、アメリカンを選んだ」と、てらいがない。

創業50周年記念モデル「Rock Star(ロックスター)」

創業50周年記念モデル「Rock Star(ロックスター)」

アメリカン路線へ向かうきっかけになったのは、創業50周年記念モデルの「ロックスター」だ。21年に出荷を終えたが、その後も購入希望の問い合わせが相次いだことから、光岡は中古車情報を提供し始めた。

実は中古車は光岡の祖業だ。自動車ディーラーだった創業者の光岡進会長は1968年、中古車の販売・修理事業を旗揚げし、79年に光岡を設立した。輸入車主体の中古車販売で会社を大きくする一方、81年には開発部門を設け、オリジナルカーづくりに乗り出した。時代に合わせて業態をしなやかに変えてきた光岡の軌跡は、過去の成功にとらわれない柔軟な社風にもつながっているとみえる。

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