
肉や魚料理に野菜が添えられた料理はよく目にするが、その逆となるとどうだろう。しかも、その主役級の野菜が契約農家から仕入れた採れたてで、うまければ、がぜん興味をそそられる。和とフレンチを融合し、野菜たっぷりのヘルシーな創作料理が味わえる隠れ家風レストランが、東京・神楽坂にある「神楽坂 今彩(こんさい)」だ。
東京メトロ東西線・神楽坂駅から徒歩1分ほど。神楽坂通りから横道に入った一角に店はある。和の情緒がそこはかとなく漂い、注意していないと通り過ぎてしまいそうな店構えだ。2006年夏のオープンから変わらぬメニューの味を、今に伝える。「今彩」に込めた意味も深い。今を彩るというほかに和とフレンチをミックスさせた一皿の「混載」、さらにはダイコンやゴボウなど根菜類の「根菜」をかけている。

根菜類をはじめとした野菜へのこだわりは、メニューからもにじみ出る。「いろいろ具材の入ったメリメロサラダ」もその一つ。単なるサラダと侮るなかれ。日ごろおなじみのレタスやトマトはもちろんだが、多肉植物であるグラパラリーフやアロエベラ、キク科の根菜であるヤーコンなど耳慣れない野菜がもりだくさん。その数は全部で28種類に上る。さらに甘エビやホタテなど季節に応じた4種のシーフードがまざり、実にゴージャス。それをシンプルなフレンチドレッシングでいただく。「プチッとだったり、カリッとだったり、シャキシャキとだったり。様々な野菜やシーフードの食感や各食材の味わいがミックスして口の中いっぱいに広がります」(今彩の熊谷加津雄代表)
油を一切使わず、旬の野菜類を焼いた「いろいろ野菜の鉄板焼き」もそうだ。こんがり焼き色がついた野菜をオリーブオイルと塩、コショーでいただく。シンプルな味付けだからこそ、野菜本来の味わいが料理のおいしさを左右するが、店で使う主たる野菜は熊谷さんの地元・千葉県や埼玉県内の契約農家などから取り寄せたもの。熊谷さん自ら足を運び、確認した畑で、面識ある生産者が丹精込めて作った野菜だからこそだろう。素材本来の味がしっかり伝わってくるのもうなずける。