灘高の「先輩」「後輩」から刺激

「悔しい」が原動力となったのは東大文1の2年生で、兵庫県宝塚市の私立校出身の川崎莉音さんだ。地元ではミッション系のお嬢様学校として知られる伝統校だが、大半の生徒は関西の大学に進学する。塾の講師や周囲の大人から有名進学校の生徒は一目置かれるが、自分たちには冷めた視線が投げかけられる。
小学校から英語を学んでいた川崎さんは、全国の中高大学生が参加する「模擬国連」の活動に熱心だった。そのメンバーの灘高の「先輩」から刺激を受けた。「先輩はものすごいスピードでしゃべる。まず話す際はフレームワークを考えてとアドバイスされた。先輩は東大法学部に進んだ」。この先輩に憧れ、東大文1を目指した。今後は警察官僚を目標に難関の国家公務員試験に挑む。
実は小山さんは現在、灘高に通う「神童」から影響を受けた。「高校の頃、年下の中学生と一緒に数学を学んだ。彼はわざわざ宇部から神戸の灘高に進学した天才だった」と振り返る。「灘の後輩」に刺激を受けたのだ。
「東大は身近な存在」
現在はデジタル社会で、地方と都会との情報格差はほとんどない。東大受験専門塾として知られる「鉄緑会」は東京と関西にしか校舎がないが、小山さんは同塾のオンライン講習を受けていたという。内藤さんはオンライン学習アプリを活用した。地方でもインターネットを通じ、優良な教材はいくらでも手に入る。
やはり大事なのはリアルな人との交流だ。親や先生の応援はもちろんだが、同世代の才能の豊かな人たちとの交わりが、モチベーション(やる気)の向上には欠かせない。「東大は身近な存在だ」と沖縄や高知などの高校を回るUTFRのメンバー。その一言でスイッチが入るかもしれない。彼らに憧れて東大に合格する地方高校出身の「後輩」が誕生する日は近いだろう。
(代慶達也)