西内『統計学が最強の学問である[ビジネス編]』(ダイヤモンド社)が、ビジネスの幅広い領域でのデータ分析の機微を伝えてくれる。本書は、経営戦略、人的資源管理、マーケティング、オペレーションの4つの領域で、分析をどうやって進め、どう結果を解釈すべきかを簡易な事例と共にまとめている。

本書が伝えてくれるのは、そもそも「なんの結果指標を改善するのか?」を決めるところがとても重要でありかつ難しいという点だ。例えば、採用・育成の判断を機械に任せたいとしよう。本書の人的資源管理の章で示されているように、人材の優秀さを測る尺度を決めるのは難しい。仮に売り上げを上げる営業人員が優秀だと定義をして分析をし、そのような人材を採用しても、実は値引きして売っている人であったら意味がない。

優秀な人員が定義できても、なぜその人がうまれるのかを分析し、優秀な人を増やすための育成方法につなげなくてはならない。

本書でも「優秀」とされるスタッフがどのような特性を持っているか、性別、年齢、試験の点数、使っている費用の項目・金額など、16の変数から分析をしている例がある。重要な変数の1つに性別があり、女性であるほうが優秀な傾向にあったそうだ。さて、筆者を含めた男性はどうしたらよいだろうか?

細かく地道な活動が大前提

さらにモデルやデータの解釈には統計の基礎知識も不可欠だ。重回帰分析、ロジスティクス回帰分析などのモデルがやっていること、分析結果としてでてくる数値の解釈ができなくては、どの問いにどのモデルが有効かが分からない。そしてこうした知識があっても、そもそもデータが整備されていないと、分析を始める前に工数をかけてデータをきれいにしなくてはいけない。こうした現実的なつまずきポイントも、本書は紹介してくれている。

ここまでくると分かるであろう。1冊目で述べられているような大きなトレンドは簡単に業務にいきわたるわけではない。機械に助けを乞うためには、改善してほしい具体的な結果指標を見極め、望ましい分析手法を考える必要があり、それはとても細かく地道な活動なのだ。

丸健一
 2009年、一橋大学公共政策大学院卒、野村総合研究所入社。大手企業社長・役員のメンターとして戦略策定、海外展開支援を手がける。研究者へのコンサルティングスキル移転などエバンジェリスト育成にも注力。自社コンサルティング事業本部の教育担当も2年間務める。慶応義塾大学卒、ロンドンビジネススクールMBA。