フグのコース料理

満室の場合は他社他店を勧めてさらに信頼度アップ

料理は会食成功の一要因であるが、昨今の食材値上げに対しても独特の工夫がある。これまでは食材原価率を厳しく管理しており、規定の数値を超えないように常にチェックしていたのだが、ここへきてのコロナ禍、原油価格の高騰、ロシアのウクライナ侵攻などの影響による食材値上げに加え、ビジネス接待も激減した。いよいよ食材原価率を下げる(売価を上げる、または安い食材に代えるなど)のかと思いきや、「今こそ、お客様へ還元するとき」と歯をくいしばって頑張っている。

食材納入業者と良い関係を保っていることも、危機を脱出する手立てにもなる。一般に大手になるほど納入業者には「そこに置いておいて」と言い、コミュニケーションが希薄の傾向がある。しかし「新宿茶寮」では、業者が「今回はこれしか(品質が低い食材)なくて、すみません」と言えば、「こういう時期はしようがないですよね」と言い、決して「品質が低いのだから安くして」とは言わないという。そうやってコミュニケーションを密に図ることによって、「急に常連さんの大切な接待宴会が入っちゃって」と相談すれば、「いつもお世話になっているので、とっておきのものをすぐにお納めしますよ」と融通をきかしてくれるのだ。これも、結局は会食の成功に結びついている。

掘りごたつ席は、壁を取り外せば最大64人収容の宴会場になる

会食が成功すれば、客の満足度は高まり、リピート率が向上する。となると、さらに客の要望レベルも高まっていく。それに対して、「うちはどんなリクエストにも絶対に『ノー』と言わないんです」と胸を張るのは、「新宿茶寮」マネージャーの西宮梨紗さん。例えば、高層階から移転したことを知らずに、景色も楽しむために窓のある個室をリクエストする客には、姉妹店の「新橋茶寮」を勧めるという。高層階ではないが、汐留のビル群を望むことができる。

しかし、接待などは店の立地が重要な要素で、どうしても新宿でなければならないことも多い。「お席に余裕があっても、満席(満室)にするとサービスの質が落ちるため、あえてお断りすることもあります。そういうときは、近隣の他社他店をお勧めし、予約もこちらでします。当店と同じコンセプトで、当店よりも少し高いお店ですね。すると『無理を聞いてもらった』ということで、当店への信頼をより深めてくださるのです」(西宮さん)

それぞれの個室はこの廊下に面している

こうして「新宿茶寮」には、ファンがどんどんついていくのだ。あるとき、1週間前に「赤坂茶寮」で接待をした常連客が、「新宿茶寮」で別の接待を予定していることが分かった。調べると、同じ価格のコース料理を予約しているという。いくら接待という仕事とはいえ、ホスト役が2週続けて同じコース料理を食べるのはつらいだろうと、店はホストの常連客を気遣った。そこで、急きょメイン料理の「黒毛和牛のすき焼き」を「ステーキ」に変えて提供することにした。その常連客の“北大路愛”がさらに深まったのは言うまでもない。

「新宿茶寮」は、多くの常連客を抱え、数多くの接待などの会食を成功させてきた。実はもう一つ隠れた成果がある。それは、アルバイト大学生の就活に大いに役だっているということだ。アルバイトは採用後、2週間の研修を受け、ホールスタッフとして現場でも手厚い指導を受ける。結果、著名企業の接待の場に居合わせることで、名刺交換など、商談相手とのやりとりを肌で感じることができる。「うちで働く学生さんは皆優秀で、内定を早くもらってきますよ。それも、2社も3社も。お陰で、早い時期から卒業ぎりぎりまで、うちで働いてくれるので助かります。本音としてはうちに就職してくれるともっといいんですけど」と西宮さんが教えてくれた。会食で満足度の高い「新宿茶寮」は、人材の宝庫でもあるようだ。

記事内での紹介店

個室会席 北大路 新宿茶寮

メニューやご予約などはこちらから