「ノー」と言わない接客 接待に成功するこの店の秘策接待で喜ばれる店② 個室会席 北大路 新宿茶寮

「個室会席 北大路 新宿茶寮」のエントランス。落ち着いた雰囲気
大切な人と一緒に行きたいお店を選べるサイト「大人のレストランガイド」から、安心して通える「行きつけにしたい店」をピックアップして紹介します。

久しぶりに東京・西新宿の「三角ビル」を訪ねた。1970年代、副都心開発の先駆けとして相次ぎ高層ビルが建設された西新宿だが、三角ビルとはその草分けと言われる新宿住友ビルのこと。竣工当時は日本一の高さを誇り、独特な三角柱形のビルで、当時の注目スポットとして大いに人気を博したものだ。最近リニューアルしたようで、JR新宿駅西口から地下の動く歩道で都庁方面に向かい、地下部分が終わって少し歩くと、以前はなかった巨大な屋根が三角ビルから歩道部分まで張り出しているのに、思わず目を見張った。

2年前のリニューアルで51階の高層階から2階に移転し、自慢の眺望がなくなって大丈夫か、という心配は一切寄せ付けず、新型コロナウイルス禍にあっても、一層予約が取りにくくなったと噂されるのが「個室会席 北大路 新宿茶寮」だ。

訪問して納得した。ビルの1階の広場では物産展のようなイベントが開催され、多くの人でにぎわっていたが、長いエスカレーターで2階にたどりつくと、そこはひっそりとして、暗い照明の落ち着いた雰囲気。奥に進むと、階下の喧噪(けんそう)がまったく聞こえてこない、優雅な数寄屋造りの“旅館の料亭”の入り口だった。

2~6人用のテーブル席の個室

「個室会席 北大路 新宿茶寮」は和食レストランであり、旅館の料亭ではない。しかし、それに勝るとも劣らないのがこの店だ。接待、宴会、慶事、弔事など大切な会食に、ゆったりとした完全個室空間で対応。旅館ではないので、客1人当たりの面積が小さい分安い。「この値段でこんな会食が実現するなんて」と、顧客からのあつい支持を得ているのだ。ランチは1カ月先まで、ディナーは2~3カ月先まで予約が入っているそうだ。

「個室会席 北大路 新宿茶寮」は創業96年になる大東企業(東京・千代田)が運営する。先ごろ英国のエリザベス女王が享年96歳で逝去されたので、同い年かと、歴史の重みを感じる。「個室会席 北大路」は同社がいくつか手掛ける飲食店ブランドの一つで、都内に9店、タイ・バンコクに1店を展開している。いずれも、会食に適した完全個室で、コース仕立ての日本料理を提供する。

完全個室の店とは、自分たちのグループだけで一つの空間を占有することができる個室のみをそろえる店のこと。仮に1人で食事をしようとすれば、1つの個室でゆったりと過ごすことができる(原則、2人からの利用を想定している)。一般の飲食店のように、大きなフロアで、隣のテーブルにはほかのグループ客がいるということはないのだ。「新宿茶寮」では、2~6人用のテーブル席の個室が11室、6~8人用の掘りごたつ席の個室が8室のほか、最大64人の宴会が可能な掘りごたつ席がある。ここは利用人数に応じて壁を設置し、大きさの異なる個室を随時設置することができる。

コロナ禍では、「個室希望だが、換気が気になる」という声も聞かれたが、消防法に従い、個室といっても一定の通気孔を天井近くに設置しているため、安心して会食を楽しむことができる。むしろ、ほかの客とは完全に隔離されているため、コロナ禍でますます引き合いが増えたのだ。外出がしにくいお年寄りや乳児がいる家族の集まりには最適だとの評判も立った。

6~8人用の堀りごたつ席の個室

各店でコースのメニュー構成は多少異なるが、季節の食材をふんだんに使ったコースを約2カ月ごとに刷新していく。「新宿茶寮」で現在提供しているのは、「特選黒毛和牛サーロインすき焼き御膳」(3300円)のほか、「四季会席」(7700円、9350円、1万1000円、1万3200円、1万6500円、全7品だが、使用食材の違いで5コースある)、そして料理長のおまかせコースである「料理長特別会席」(1万9800円)。また、「新宿茶寮」でのみ、松花堂弁当タイプの「四季御膳」(4400円)を用意。いずれもこれにサービス料が10%かかる。

「新宿茶寮」の料理は、旬で品質の高い厳選した食材を用い、丁寧に仕上げていることもあり、おいしいのは当たり前。それ以上に尽くしているのが、会食を成功させるためのさまざまな努力だ。例えば、牛肉は最高品質の黒毛和牛を使うのだが、意外にもA5ランクではなくA3ランクだという。メインの牛肉だけを食べにきているのではなく、7品から成るコース料理のため、A5ランクだと脂が多く胃が疲れてしまう。赤身主体のA3ランクにして、コースのほかの料理も併せておいしく食べてもらい、会食自体が成功するようにとの工夫だ。

また、同じ会食の客が違うコースを頼んだ場合、料理内容が違うため、小鍋の火をつけるタイミングがずれてしまうことがある。客が「あら、私の小鍋だけなぜ、火をつけてくれないのかしら」と不安にならないよう、料理の構成を変えることもあるという。客それぞれに違う好みを同時にかなえながら、会食全体の雰囲気を乱さないことも、会食を成功させるための秘けつだという。

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