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投資家の筆者がこれから花開く企業の条件を説く

投資家の筆者がこれから花開く企業の条件を説く

今回、取り上げる書籍は『おいしいニッポン 投資のプロが読む2040年のビジネス』。「おいしい」といってもよくあるグルメ本でなければ、外食産業や食品業界を取り上げたビジネス本でもない。資産運用業界で長く有望企業を目利きしてきた著者が、20年後の社会変化を予測し、成長する企業の条件を解き明かしている本だ。

投資家として数多くの経営者と関わり続けてきた経験から、伸びる企業は何が違うのかを解説する。日ごろから「うの目たかの目」で企業を見つめる著者の知見が伝わる一冊。ビジネスパーソンに対して、いまの仕事で頑張るか、それとも転職か、はたまた起業して独立を選ぶのかと、人生への問いかけを迫るようでもある。社会人生活で初めて、人生の転換点を迎える年齢にさしかかった20~30代の「若手リーダー」にぜひお薦めしたい。

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著者の藤野英人氏

著者の藤野英人氏

著者の藤野英人氏は投資運用会社レオス・キャピタルワークスの会長兼社長であり最高投資責任者。1966年富山県に生まれ、90年に早稲田大学法学部卒業。投資運用会社のファンドマネジャーを経て、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業しました。主に日本の成長企業に投資する株式信託投信「ひふみ投信」シリーズの運用で知られています。投資家、経営者の立場にとどまらず、東京理科大学や早稲田大学などで教鞭(きょうべん)をとるなど、教育者としても活躍の幅を広げています。『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(マガジンハウス)、『投資レジェンドが教えるヤバい会社』(日経ビジネス人文庫)など多数の著書があります。

「おいしい」チャンスが転がる

本書は2040年を展望した社会・経済動向の変化を読み解くものです。著者によると、3年後や5年後を見通すことは難しいが、10年後、20年後なら描き出すことは可能だ、と。理由については、数年先だと紛争や疾病、災害などがあり短期的な変動要因があるが、10年先のメガトレンドだと、大きな流れは変わらないというのです。

著者のこうした問題意識をもとに、本書ではテクノロジー、社会変化と働き方、ダイバーシティ(多様性)、地方創生といったテーマを章別に立ち上げ、それぞれのメガトレンドを読み解こうとしています。各章の構成は、本記とその後に「ケーススタディ」を組み合わせたもので、そのケーススタディではおのおののテーマに関連する企業が紹介されています。トレンドを読み解くヒントはこの企業にあります。いずれも著者が投資したり経営に深く関わったりした9社のスタートアップ・中小企業で、個性豊かな企業ばかり。短期的な収益のみにとらわれず、社会のニーズを的確にとらえ、その先を見通した成長性の高さを感じさせられます。

文章は非常に明快で、社会人になったばかりのビジネスパーソンにも理解しやすいのが本書の特長です。本書のケーススタディで描かれている企業の取り組みがよくわかります。「過去に8000人ほど」の経営者と会い、さまざまなプレゼンを聞いてきたという著者が投資家としてこれら企業と関わっているだけに、経営者の本音をあますことなく引き出し、将来を見据えたビジネスモデルの巧みさを紹介しています。今はまだ、身の丈が小さなスタートアップであっても、いずれ劣らぬ高い志をもって社会を変えていこうという意気込みすら感じ取れます。

社会を変革する可能性を秘めた企業がゴロゴロいる、それを著者はニッポンにはチャンスがあふれたという意味で、「おいしい」と表現しているのです。

いまだに"昭和のオジさん"が経営する旧態依然とした日本企業を見ていると「日本は本当にダメな国だ」と思わざるを得ませんが、きわめてアナログな国で課題が山積しているからこそ、おいしいチャンスがゴロゴロ転がっているのです。
チャンスを活かして「おいしいニッポン」を味わうのか、それともみすみすチャンスを逃すのか、選ぶのは皆さん自身――本書のタイトルには、そんなメッセージを込めたつもりです。
(はじめに 17ページ)

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