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2021年はNHK大河ドラマの影響もあり、渋沢栄一の著書「論語と算盤(そろばん)」が話題になりました。渋沢という明治期の偉大なビジネスパーソンの心を捉えた「論語」は今なお、多くの経営者や起業家、組織のリーダーに読み継がれています。「論語」の愛読者の1人というユーグレナ社長の出雲充氏に、孔子の「論語」との出合いや特に大事にしている「論語」の一節について語ってもらいました。

(6)「人新世の『資本論』」に納得も一発逆転の発想は疑問

私が「論語」を勉強し始めたのは10年ほど前、事業の相談でSBIホールディングス社長の北尾吉孝さんにお目にかかったのがきっかけでした。起業して数年がたっていましたが、経営者としての未熟さを日々感じ、「もっと人間として成長したい」「重要な判断をする際に軸となるものが欲しい」と思っていたので、率直に「北尾さんは日々お忙しい中、何をどうやって学んでいるのですか」とお聞きしました。そこで「論語」を薦められたのです。

出雲充 ユーグレナ社長

出雲充 ユーグレナ社長

北尾さんは吉田茂氏から中曽根康弘氏に至る歴代首相の「指南役」と言われた陽明学者・思想家の安岡正篤氏を非常に尊敬しており、安岡氏が書いた解説書などを手がかりに「論語」を学んできたと話していました。私はその時初めて安岡氏のことを知り、しばらくの間は北尾さんが書いた「実践版 安岡正篤」などを参考に、「論語」を学んでいました。

そして今から4~5年くらい前でしょうか、知り合いから「『論語』が好きなら、経営者が集まる『論語』の素読会があるよ」と誘われ、行く機会がありました。すると、何とその講師が正篤氏のお孫さんの安岡定子氏だったのです。正篤氏直系の方から直々に「論語」を学べるとは何とありがたいことかと思い、それ以来、隔月で素読会に出るようになりました。新型コロナウイルス禍後はオンラインになりましたが、以前は定期的な会のほか、寺に集まって読むような機会も年に数回ありました

「子曰く、辞は達するのみ」

「論語」の学び方としては、やはり声に出して読むのが一番です。小学生向けから大人向けまでさまざまな素読会があるので、興味がある方は参加してみるといいと思います。私が出ている経営者向けの素読会では、毎回テーマに沿って定子氏が選んだ章句を声を出して読み、解説を聞きます。その後、参加者がその教えを経営にどう役立てているかなど、具体的な事例も交えて互いに話をします。そこで深く話をすることで、ビジネスと「論語」が自分の中で結びつき、経営上の大きな決断を迫られた際にも「論語」の言葉が頭に浮かび、進むべき道が見えるようになってきました。

数ある「論語」の言葉の中で、私が今、一番深く心に刻んでいるのは「子曰(いわ)く、辞は達するのみ」という一節です。「辞」は言葉、「達する」は相手に届くという意味。「言葉は発信するだけでは意味がなく、相手に十分伝わるようにすることが何より大切だ」という教えです。

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