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ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。新型コロナウイルス感染拡大の第6波が続く中、来客が少ない状況が続いているが、ビジネス書でも本格的な厚めの本の売れゆきがよいなど、巣ごもり志向を受けた新たな回復の兆しも出てきているようだ。そんな中、書店員が注目するのは、米国を代表するエネルギー問題の専門家が世界の最新のエネルギー地図を詳述した本だった。

エネルギーめぐるプーチンの大計画とは

その本はダニエル・ヤーギン『新しい世界の資源地図』(黒輪篤嗣訳、東洋経済新報社)。著者のヤーギン氏は1991年の著作『石油の世紀』でピュリツァー賞を受賞した米国のエネルギー問題の大家。その大家が最新の状況を概観して「地政学とエネルギー分野の劇的な変化によってどのような新しい世界地図が形作られようとしているか、またその地図にどのような世界の行方が示されているか」を論じたのが本書だ。扱われているのは米バイデン政権誕生までだが、ロシアによるウクライナ侵攻という現在進行形の世界の動きを読み解くのにも十分示唆に富む一冊になっている。

全体は6章構成。500ページを超える大著だ。第1部から4部は地図の名にふさわしく「米国の新しい地図」「ロシアの地図」「中国の地図」「中東の地図」を描き出す。5部では「自動車の地図」を扱い、オートテックの動向を展望、6部は新しいエネルギーの地図において要の要素となる「気候の地図」を取り上げる。

地域別の動きの中で今の読者の最大の関心は第2部「ロシアの地図」だろう。書き出しの章のタイトルは「プーチンの大計画」。「西側の人間がプーチンと話をしていつも驚かされるのは、エネルギー産業やエネルギー市場にとても詳しく、複雑な問題もすらすらと論じられることだ。国のトップというより、企業のCEOのような印象を相手に与えた」。こんなプーチン評を交えながらロシアのグローバルな影響力の源泉としての石油と天然ガスについて論じていく。

ビジネス書コーナー近くの柱前の面陳列棚最上段に7冊並べて展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

ビジネス書コーナー近くの柱前の面陳列棚最上段に7冊並べて展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

ウクライナ問題が出てくるのは、「欧州へのロシアの天然ガス供給は、地政学的な対立の中心をなしている」という文脈においてだ。その緊張状態がロシアとウクライナとの関係に一番あらわになっていると著者はいう。その影響は欧州のエネルギー市場から米ロ関係にまで及んでいることをキエフ大公国の昔にまでさかのぼって跡づけていく。さらにそこには中ロの接近や中央アジアの旧ソ連諸国との関係も絡んでくる。2国間の問題の背景に横たわるエネルギーをめぐる広大な地図が本書を読むとくっきりと見えてくる。

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