どんな人がなりやすい?
変形性膝関節症は、いろいろな要素が組み合わさって起こるが、次のような要因がある人はなりやすい。
・肥満
・太ももの筋力の衰え
・若い頃のケガ
・O脚やX脚
・膝に負担の大きいスポーツなどの習慣
・関節リウマチなどの病気
体重が重いと、大きな力が膝関節にかかる。歩くとだいたい体重の3~5倍、小走りなら6~7倍の力が膝関節にかかると言われている。アメリカの研究では、発症時に太っている人はもちろん、若いとき(20歳から29歳)にBMIが25を超えていた人は、早くから変形性膝関節症を発症することがわかっている(下図)。

メタボリックシンドローム(いわゆるメタボ)が変形性膝関節症と関係することもわかっている。
メタボは、内臓脂肪がたまって高血圧、高血糖、脂質代謝異常のうち2つ以上が組み合わさり、心臓病や脳血管障害が起こりやすくなる状態だ。高血圧、高血糖、脂質代謝異常の3つのうち2つ以上ある人は、メタボでない人に比べて変形性膝関節症の発症が統計的に有意に高い。3つあると、さらに発症しやすいという[注1]。
変形性膝関節症は、筋力との関わりも深い。大腿四頭筋の力が弱い人ほど変形性膝関節症が進行しているという報告がある。ただし、筋力が落ちているから変形性膝関節症が進行したのか、変形性膝関節症が進行したから筋力が落ちてしまったのかは、わからない。
「若いときに膝を痛めた人は、変形性膝関節症を発症しやすくなります。また、あまり練習をしないでいきなりフルマラソンを走ったりするのもよくありません」と冨田さんは言う。若い頃に体重が重かった人や靱帯損傷など膝を痛めた経験がある人は、あとで紹介するような膝に負担がかからない生活を心がけたほうがいいだろう。
[注1]Osteoarthritis Cartilage. 2012 Nov;20(11):1217-26.
下半身の筋トレはもちろん、有酸素運動も効果がある
変形性膝関節症の治療法は、大きく分けて保存療法、再生療法、手術療法の3種類ある。
保存療法とは、手術などで直接原因を取り除くのではなく、生活習慣の見直しや薬剤治療で症状の緩和を目指す方法だ。
最初は患者教育、運動、減量などの非薬物療法を試みて、改善しない場合には、鎮痛剤、関節内注射などの薬物療法を行う。さらに重度になると、手術を考える。
「関節の変形の進み具合とは関係なく、運動療法は効果があります」と冨田さんは言う。「運動療法を行うときは、患者さんの症状やライフスタイルに合わせて低負荷の運動から開始し、適切な負荷の運動量を決定していきます。大切なのは、定期的にフォローアップをして運動量を見直し、継続できるようにすることです」と冨田さん。
「太ももや股関節周辺の下半身の筋力トレーニングだけではなく、有酸素運動も効果があるという研究もあります。有酸素運動では、自転車、水中ウオーキング、水泳のような膝に直接負担がかからない運動を、最大心拍の80%くらいまでの強度で行うとよいでしょう」と冨田さんは勧める。
なお、日本整形外科学会のホームページでは、変形性膝関節症の運動療法について説明されているので参考にしよう。
https://www.joa.or.jp/public/publication/pdf/knee_osteoarthritis.pdf
運動療法で膝の周辺の筋力が増えると痛みが改善するのは何となく納得するだろう。しかし、それ以外の運動でも痛みの改善が認められるのだが、その理由は実はまだよくわかっていない。ただ、運動をすると鎮痛効果がある内因性オピオイドが分泌されることが関係しているとの説がある。
症状の緩和には、膝に負担がかからないように日常生活を見直すことも大切だ。
「患者さんには、膝に負担がかかる行動を避けること、体重を減らすこと、大腿四頭筋の筋力増強を行うことなどをアドバイスします」と冨田さんは言う。「正座は立ち上がるときにかなり負担がかかるので、避けてください。階段は、上るよりも下りるときの負担が大きいので気をつけましょう。歩くときにつえを使うことでも膝への負担を減らせます」ということだ。