岡島 義の「眠りの森」探検

眠れない→寝た気がしない 加齢で変わる不眠の悩み 岡島 義の「眠りの森」探検(その2)

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「睡眠(休養)は、栄養、運動と並ぶ健康の3要素」と語るのは、東京家政大学で睡眠行動科学研究室を主宰する岡島義氏。東京都内のクリニックで睡眠障害や不安症に悩む人々への支援も行っています。連載では、健康や未病のもととなる「質の高い睡眠」を実現するために、知っておきたい眠りのディープな世界を紹介していきます。

「最近なかなか寝つけなくて困っています」

「夜中に何回も目が覚めてしまうんです」

青春真っ盛りの高校生や大学生、働き世代の社会人、退職後の高齢者と、世代に関係なく、同じ悩みを持って私のところに相談にやってきます。この2つの症状は、いわゆる「不眠症状」なのですが、その原因は世代によって大きく異なります。

今回は、不眠の原因の違いについて探っていきましょう。

■若者の睡眠の悩み:「眠れない」「朝起きられない」

学生時代の眠りの問題は、「寝つけないこと」と「朝、起きられないこと」が中心です。これは夜更かししていることが原因なのですが、必ずしも生活習慣だけが問題になるわけではなく、「睡眠―覚醒」リズムの後退化現象も大きく関係してきます。つまり、日をまたぐ前に眠りにつきたくてもできない体になってしまっているのです。しかし、学校には行かなければならないのでなんとか起きて登校する。睡眠不足が積み重なっていき、朝起きづらくなっています。

成人になると、睡眠時間は短くなっていきますが、それでも新入社員は、中堅、ベテランの先輩よりも睡眠時間を多く必要とします。すると、学生時代と同じように、睡眠不足状態となり、仕事中の居眠りなどの問題が出てきます。寝不足解消のために休日に「寝だめ」をしますが、これはソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)という別の問題を引き起こします(第1回連載参照)。

■中・高齢者の睡眠の悩み:「よく寝た感じがしない」

働き世代も中盤になると、「よく寝た感じがしない」といった悩みが中心になってきます。仕事にも脂がのってきて、就寝時刻ぎりぎりまで仕事をして過ごすこともあるでしょう。育児によって自分の思い通りに睡眠が取れないことも出てきます。さらに運動不足や帰宅中の通勤電車内での居眠りなど、いろいろな習慣の積み重ねによって、「なかなか寝つけない」とか「途中で何度も目が覚める」といった悩みが出現していると思われます。

「よく寝た感じがしない」という悩みは働き世代後半から退職後に、より顕著になってきます。また、この世代の方からよく聞くのは、「やることがないから寝る」という言葉です。つまり、寝床で過ごす時間が増えていくのです。ところが、それに比例して実際の睡眠時間が延びるわけではないので、「よく寝た感じがしない」ということになってきます。さらに「朝早く目が覚めてしまう」という相談が増えるのも、この世代の特徴です。

このように「悩み」は同じでも、年代によってその原因は異なります。どうしてそのようなことが起こるのか? 答えは、①睡眠時間の変化と②睡眠―覚醒リズムの変化です。

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