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原田英治社長が立ち上げた英治出版は、『ティール組織』など先駆的な組織論を紹介してきた。同社の組織文化もこれまたユニークだ

過去20年余り、業界全体の売り上げは右肩下がり。出版不況がうち続く中で「絶版にしない」「著者を応援する」をモットーにロングセラー、ベストセラーを生み出してきた英治出版(東京・渋谷)。「まねされるのはいいが、自分がまねするのは大っ嫌い」という原田英治社長(55)は、人材の採用・組織運営においても独自の考え方を持つ。クリエイティビティーを生む組織とは。

英治出版の社員は現在12人。新卒以外は全員、異業種からの転職組だ。同じ出版業界からは採らない方針なのか、と尋ねると原田英治社長は笑ってこう言った。

「たまたまなんです。同業者が応募しているかどうかすら知りません。うちは履歴書を送ると不合格になるのです。名前や性別、年齢も聞きません。1次審査で送ってもらうのは『あなたの人生観を教えてください』というテーマのエッセーのみ。字数制限?それもないです。エッセーは社員全員が回し読みして、それぞれ一緒に働きたいかどうか○×をつけ、○が多かった上位の方に面接に来てもらっています」

ジェンダーへの関心が高まってきた最近でこそ、企業が履歴書の性別の記入や写真貼付を不要としたり、国が履歴書の様式を改めたりといった動きがニュースになっている。しかし原田氏は2004年頃には「履歴書があると相手を色眼鏡で見てしまう」と気づき、今の方式に変えたという。

社員全員で取り組む採用で自分たちに問うのは、経験やスキルよりも「その人がいたらどんな面白いことが起きそうか」「その人のミスを愛せそうか」「その人が英治出版で働くと、今年より来年、来年より再来年、よい顔で年末を迎えられそうか」だ。

そんな独自の採用を続けた結果、メンバーには銀行出身者や原田氏と同じくコンサルティング会社で働いていた人、中東での事業経験者、NPOで無業者支援に携わっていた人など多様なバックグラウンドを持つ人材が集まった。そのことが、既存の出版社とは一線を画す発想を可能にした。

「僕らはあらゆることを自分たちでゼロから考えます。業界の常識とか出版社の経営はどうあるべきかなんてことを知らないからです。事例も調べません。調べるくらいなら、自分たちで考えたほうがいい。好き勝手に独創的にやったほうが絶対楽しいですから。中学生がやるお化け屋敷とおんなじです。どこにもお化け屋敷のマニュアルなんてないから、どうやって真っ暗闇が作れるか、どうやったらみんなを怖がらせられるか、一人ひとりが知恵を絞る。自分たちでゼロから考えるからこそ、ワクワクするのです」

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