商談花咲く「喫茶室ルノアール」 広い席間の理由銀座ルノアール(上)

「喫茶室ルノアール」は座席配置がゆったり(東京・新宿の新宿ハルク横店)

ゆったりした座席配置とクラシックな雰囲気で知られる「喫茶室ルノアール」。運営会社の銀座ルノアールは首都圏を中心に複数の喫茶店・カフェ業態で約100店舗を展開している。商談や打ち合わせに向くとしてビジネス客の利用が多いのは、同業他社との際立った違いだ。コーヒーを飲み終えた後に、無料の緑茶サービスがあることでも知られる。ルノアールはなぜビジネス客に支持され続けるのか。

前身企業は1964年に創業。喫茶店業界の先陣を切って89年に株式を店頭登録し、後にジャスダックへ上場した老舗だ。

洋風の名前を持ち、看板商品はコーヒーだが、実はせんべい店から始まっている。東京・中野の花見煎餅が母体。その喫茶店事業がスピンアウトする格好で創業し、64年、日本橋に第1号店を構えた。だから、「銀座」の社名を掲げながら、今も本社は中野区にある。

ルノアールの店内は赤いじゅうたんが敷き詰められ、大きな柱時計が置かれた、いくらか古風なムードが持ち味だ。空間コンセプトには「大正ロマン」と「昭和モダン」の2種類がある。インテリアのたたずまいだけではなく、飲食メニューにも微妙な違いがある。どの店舗がどちらのコンセプトかは、公式ホームページで公開されている。

「昭和モダン」にリニューアルした「新宿ハルク横店」(東京・新宿)で小宮山誠社長は「『昭和モダン』への変更を進めているが、昔ながらの落ち着いた居心地を大切にしている」と話す。ルノアールはビジネス客が好んで利用している事情もあって、都心部に多く、新宿エリアだけで17店もあるという。新型コロナウイルス禍のあおりで出勤者が減り、営業上の対面シーンも減ったせいで、業績へのダメージは小さくなかったが、「少しずつビジネス利用が戻りつつある」(小宮山社長)。

ビジネス客に支持される理由を尋ねると、小宮山社長は「ゆったりした空間」「丁寧なおもてなし」「居心地のよさ」を挙げた。「ゆったりした空間」を象徴するのは、隣のテーブルとの距離だろう。込み入ったビジネストークの場合でも、隣席の人に聞こえにくいのは、安心感が高い。ビジネス街のルノアールでは半数以上がスーツ姿という場面も珍しくない。

都心部の喫茶店・カフェでは高い地価を反映して、窮屈にテーブル・椅子を詰め込んでいるケースが多い。しかし、ルノアールではトイレに立つ際の出入りでも隣席が気にならないほど、テーブル間にスペースがある。「東京・江古田に出店した際(65年)、予算を内装にかけすぎて、椅子はあるだけの数を等間隔に並べたところ、お客様からは『くつろげる雰囲気』と好評だったので、その配置が基本形になった」と、小宮山社長は明かす。つまり、プランを練ったレイアウトではなく、一種の「結果オーライ」だったといえる。

ただ、もともと「ホテルのロビーをベンチマーク(比較基準)と位置づけている。プライバシーを重んじるホテルロビーも座席配置に余裕を持たせていて、その意味では本来の意図となじむ」(小宮山社長)。商談をはじめとするビジネス系の相談事では、秘密性が求められるだけに、「ひょうたんからコマ」のような形で生まれたゆったりレイアウトはビジネス利用が広がるうえで大きな強みになったはずだ。

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