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答えと解説

正解(間違っている説明)は、(2)嗅覚障害は女性の非喫煙者に多い です。

新型コロナウイルス感染症の一症状としても話題になっている嗅覚障害。嗅覚障害には、匂いの感覚が弱って匂いを感じにくくなる「量的」な障害と、匂いの感じ方が変わってしまう「質的」な障害があります。嗅覚障害に詳しい金沢医科大学医学部耳鼻咽喉科学主任教授の三輪高喜氏によると、一般的な嗅覚障害は、慢性副鼻腔炎、風邪(感冒)、頭や顔のケガ(外傷)が3大原因とされています(図1)。

図1 嗅覚障害の主な原因

2009年6月~2019年6月に金沢医科大学嗅覚外来を受診した新規患者のうち、異嗅症や検査依頼を除く1683例を対象としたデータより(三輪氏提供)。最も多いのは慢性副鼻腔炎で、感冒後、外傷性が続く。ただし、コロナ禍はマスク着用や手指消毒が徹底されて風邪を引く人が減ったため、感冒後の嗅覚障害は減少していると予想される。

匂いのもとになる分子は鼻や口から入り、鼻の奥にある嗅細胞という細胞の粘膜表面にある繊毛にキャッチされ、電気信号に変わって脳の眼窩前頭皮質という場所に伝わります。嗅覚障害の一番多い原因である慢性副鼻腔炎では、鼻が詰まり、匂いが嗅細胞まで届かないために嗅覚が低下します。アレルギー性鼻炎や花粉症、鼻の中にできるポリープ(鼻茸、はなたけ)でも、同じ理由で匂いを感じにくくなります。

次いで多いのが、風邪やインフルエンザなどのウイルスや、頭・顔の外傷により、嗅覚を司る嗅神経がダメージを受けて嗅覚が落ちるものです。「アルツハイマー型認知症やパーキンソン病のような加齢性の病気でも、早期から嗅覚障害が起こることがあります」(三輪氏)。

リスク因子は「60歳以上、男性、喫煙者」

嗅覚障害の主なリスクファクターは、60歳以上、男性、喫煙者であることです。「男性は60代から嗅覚が下がりますが、女性は化粧品や香水など多様な香りに接するので嗅覚が衰えにくく、嗅覚障害が目立つのは70代以降です。この男女差には、男性のほうが喫煙率が高いことも影響するようです」と三輪氏は話します。さらに、副鼻腔炎のような鼻の病気のほか、糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病、動脈硬化がある人も嗅覚障害を起こしやすいと言われています。

写真はイメージ=PIXTA

嗅覚障害を早期に発見するために有用なのが、カレーの匂いです。「嗅覚障害は認知症の初期症状として出ることがあります。そこで当大学では、健常な高齢者、アルツハイマー型認知症の人、軽度認知障害(MCI)の人の3グループに分け、カレーを含む12種類の匂いを嗅いでもらう実験を行いました。すると、健常な高齢者の97%はカレーの匂いが分かりますが、MCI、アルツハイマー型認知症と進むにつれ、カレーの正解率が下がるのです。カレーの匂いが分からなければ嗅覚障害の可能性が高い、つまりカレーの匂いは早期発見のバロメーターと言っていいでしょう」(三輪氏)。

視力や聴力と違って、嗅覚の場合は、衰えてきても多くの人は自覚がありません。嗅覚障害を放置すると、ガス漏れや食品の腐敗臭に気づきにくいなど、さまざまな問題が生じるので注意が必要です。カレーの匂いが分からなくなったと感じたら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。「私が患者さんにお勧めするのは、食べ物や入浴剤などの好きな匂いを朝晩、意識して嗅ぐことです。嗅覚の異変に気づくきっかけになりますし、嗅覚障害を予防できる可能性もあります」と三輪氏は話しています。

この記事は、「新型コロナだけではない、嗅覚障害・味覚障害の原因と治療法」(田中美香=医療ジャーナリスト)を基に作成しました。

[日経Gooday2022年7月19日付記事を再構成]

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