最近また、MA-1が若者たちの間でネオ80年代ルックやネオ90年代ルックなどと呼ばれてはやっているが、当時は今どきの若者のようにオーバーサイズで着るのではなく、みんなトム・クルーズの着こなしをまねていた。
ケミカルウオッシュの「リーバイス501」や「エドウイン」などのジーンズをノーべルトで尻も太腿(もも)もパツンパツンのジャストサイズではき、ジャストサイズで着たMA-1の下は「ヘインズ」の3枚パックの白Tシャツの裾をジーンズにタックイン。どちらかといえばトム・クルーズというよりは80年代後半にトレンディー俳優として人気があった吉田栄作の着こなしに近い。いわゆるこれこそがリアル80年代アメカジである。

ただ、アメカジとミリタリーファッション好きの間では知られたエピソードだが、実は前作のトップガンでトム・クルーズが着ていたフライトジャケットはMA-1ではない。トム・クルーズが演じるマーヴェリックが劇中で着ているのはレザータイプの「G-1」と、襟付きで裏地がオレンジ色ではない「CWU36P」というタイプのフライトジャケットである。
実は「MA-1」ではなかった
では、なぜMA-1が間違ってはやってしまったのか。筆者の推測だが、レザータイプのG-1は当時も高価だったので、そうそう高校生や大学生には手が届かなかった。また、ジーンズに合わせるなら、襟付きのCWU36Pよりニット襟のMA-1の方がコーディネートが楽で、着こなしやすい。そんな理由からではないかと思う。

むしろ筆者の世代にとってMA-1の着こなしの参考になった映画といえば、スティーブ・マックイーンの遺作になった80年公開の「ハンター」だ。この作品で現代の賞金稼ぎ(ハンター)を演じているスティーブ・マックイーンはいつもブルーのシャツにMA-1を羽織り、「リー」のジーンズに「オニツカタイガー」のスニーカーを履いている。

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