スマホで『ゴッドファーザー』

――監督は、動画配信はご覧になりますか?

そうですね。Huluとか大手配信サービスを見ています。実はテレビはニュース以外、ほとんど見ないんです。とくにバラエティー系、ドラマ系はよほど話題になるもの以外はリアルタイムでは見ないです。

――視聴方法は?

スマホで映画を見ています。実は去年、入院したんですが、病室はテレビしか映らないので、飽きちゃって。そこで、今しか見られないのは何だろうと思って、スマホで動画配信を見始めました。『ゴッドファーザー』三部作を見たり『泥の河』を見たり、それまではスマホで映画を見るなんてありえないって思っていたんです。でも、意外とアリだなって。それに便利ですからね。スマホだとちょっと用事があると止めて、またすぐ見ることができる。こんなことを僕が言うのはなんですけど(笑)。

ただ、音はヘッドホンで聞かないといけないと思います。僕も含めていろいろな映像作家が音にはこだわっている。魂を込めていますからね。

本当はスマホじゃなくて、巨大な画面で見るというのが望ましいし、それをお願いしたいことではあるけれど、今の時代、いろんな見方があっていいんじゃないかなって。自分自身も体験したので、そう思います。

――スマホ視聴を体験したところで、今回の作品づくりにフィードバックしたことは?

小さな画面でも見られるような情報の作り方には心がけています。たとえば、物のサイズ感。人物のサイズとか、気持ち大きめに撮っておく。音も巨大な音で細かい音までチェックできるサウンドスタジオで仕上げるんですが、最終的にはテレビの小さなスピーカーで流して確認します。それで聞こえているかどうか。スマホのスピーカーでもちゃんと情報はつながっているかどうかは気をつけています。

――ところで今でも、家でスマホで視聴なんですか?

そうですね(笑)。正直、申し上げると。大きいテレビは子どものYouTubeで取られ、あるいは奥さんがBTSで占拠する。昭和の言葉でいう「チャンネル権」が僕にはないんですよ。だから、自分の部屋にこもって、スマホ、ないしは普通のテレビで配信を見ています(笑)。

――どんな作品を見ているんですか?

劇場で見た『ミッドサマー』をもう一回見たり、先ほど挙げた『泥の河』のような古い作品を見直したり。韓国ドラマにはハマってないけど、韓国映画はすごいなと思って見たり。つい先日、コメントを書く仕事があって、ドキュメンタリー映画の『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』を見ました。映画館で一度見ているんですが、今回はいろんな思いがこみ上げてきて、1人でスマホ見ながら、泣けてきました。ドキュメンタリーは好きなので、自分自身も作ろうと思っていますし、いろいろ本当に勉強になりましたよ。

――今、テレビ、映画、配信に対してどんな思いを抱いていますか?

コロナの時期を通じて、映画はかなり打撃を受けていますよね。この1年で映画館に行く人は激減しているし、映画という表現も幅が狭められてきている。ちょっと腕を組んで考えてしまうような、いわゆる社会派といった作品は興業として成立するのがなかなか厳しい。その一方で、若年の女子層を目当てにしたような作品が主流になりつつあるのには危惧を感じます。

やっぱり映画って、自由でありたいと思うし、社会に対してある程度、距離を持った批評性がないとダメだと思うんです。いろんなジャンルがいろんなところで表現できるチャンスがあるべきですよね。そう考えると、やはりコロナというのは非常に罪深い社会現象だったなと思います。

じゃあ、相対的に配信ものが伸びているのか。その実態はわからないけれど、僕は配信で作品を作ること、テレビの地上波で作ることに垣根はないし、そこでできることの方向性は必ずあると考えています。配信ドラマだからと言って、一発ウケすることだけでもないだろうし。そこは注意深く、考えて作っていきたいと思っています。

(ライター 前田かおり)

Huluオリジナル「死神さん」
警視庁内にある謎の部署で1人、無罪確定になった事件を再捜査する刑事・儀藤(田中圭)。連絡係として様々な手配を請け負う警察官・南川メイ(前田敦子)の協力のもと、毎回異なる相棒と事件に挑む。相棒役には、小手伸也、蓮佛美沙子、りんたろー。、長谷川京子、竹中直人ら。Huluで毎週金曜、1新エピソードずつ独占配信中(全6話)。
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