無罪が確定したえん罪事件を専門に再捜査するところから、 “死神”と呼ばれているクセモノ刑事の活躍を描くHuluオリジナル『死神さん』。現在、Huluで独占配信中のオリジナルドラマで、大倉崇裕の同名小説をベースに、『TRICK』シリーズや『SPEC』など数々のミステリー作品を手掛けてきた堤幸彦監督がメイン監督を務めて映像化した。主人公の刑事・儀藤(ぎどう)を演じる田中圭とは、2007年公開の映画『包帯クラブ』以来、14年ぶりの再タッグという。そんな堤監督に、田中の俳優としての魅力や、本作への意気込み、また動画配信についての考えなどを聞いた。
田中圭を突き崩してみたい
――主演の田中圭さんとは07年に公開された映画『包帯クラブ』以来、14年ぶりの再タッグだそうですね。今回は初めて主演と監督として向き合い、どんな思いを持たれたのでしょう。

田中クンは日本の映画やドラマでは「田中圭」という記号になっていると思うんです。だったら、ちょっと見たことのない田中圭を作ってみたいと思いました。
とくに、彼は芸歴も長い。それなのにあまり荒波にもまれた感じがしないというか、何年かおきに会っても飄々(ひょうひょう)としているというか、田中圭は田中圭のまんま。そこが面白いと思うし、だから、そこを突き崩してみたいと思いました。
『包帯クラブ』でキャストをオーディションで決めていたとき、田中クンにその相手役をやってもらったんです。途中から僕が「ファルセットの声色で演じてみて」とか「○○さん風に」とか、彼にリクエストしたら、全部、その通りに応えてやってくれたんです。田中圭はいろいろと変化(へんげ)できる俳優なんだなと強く感じて、いつかどこかで勝負してみたいという思いはずっとありました。
――ビジュアルを含め、儀藤のキャラクターはどのように作ったんですか?
衣装合わせの部屋で帽子やコートを選びながら、田中クンとしぐさやクセなどいろんなアイデアを相談しました。彼はこちらが「こうしましょう」「こうしてください」というとすぐに正確な芝居をしてくれる。ロボットみたいにすごく再現性が高いので、僕らのリクエストに応えて、キャラの濃いのを作ってきてくれるんです。このご時世にまだここまで行けるかと。ちょっとうれしくなりました。まさに、『包帯クラブ』のオーディションの時に、俳優・田中圭の萌芽(ほうが)を感じましたが、それが今回こうして実を結んだなと思いました。

――儀藤の「逃げ得は許しません!」という決めゼリフは痛快ですね。
日本のこういう作品には、決めゼリフって欠かせないでしょう。で、決めゼリフがあるなら、ポーズも必要だと思って、指のポーズもあれこれと考える中でできた感じです。