
およそ20年に1度の間隔でブームが到来してきたヨーヨーに新星が現れた。2022年5月、タカラトミーが、同社公式ショッピングサイトで発売した「MUGENYOYO(ムゲンヨーヨー)」だ。単純にヨーヨーとして楽しむのは二の次。むしろ、遊んでいる様子を専用のスマートフォンアプリで動画撮影し、TikTokなどに投稿することを主眼に置いた斬新な商品設計が特徴だ。Z世代に響くのか。
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国内のヨーヨー市場を振り返ると、おおよそ20年周期でブームが訪れてきた。第1次ブームは1970年代後半、米国の玩具メーカーがコカ・コーラとタイアップして、ヨーヨー本体の両面に「Coca Cola」などのロゴが入った商品を提供し、小学生を中心に大人気となった。当時小学生だった、現在50代の人であれば強く記憶に残っていることだろう。
その約20年後、今30代の人が子どものころに起こった社会現象が、90年代後半にバンダイ(東京・台東)が発売し、店頭で品切れが続出するほどの一大ブームとなった「ハイパーヨーヨー」だ。児童向けの漫画雑誌とのタイアップ、競技会の開催など、積極的なプロモーションの効果もあり、空前のヒットを記録した。
そして、前回のブームから約20年の月日を経て登場したのが、タカラトミーの「ムゲンヨーヨー」である。手掛けたのは、2020年11月に発足し、玩具とデジタルの融合をテーマに全く新しい商品の開発を目指す、同社NEXTビジネス本部Moonshot事業部だ。開発を担当した同事業部Communication Team課長補佐の根岸さやか氏はこう話す。
「ヨーヨーは玩具の定番で、過去に何度かブームを起こしたことから分かるように、人を引き付ける魅力があり、遊びとしてのポテンシャルは高い。そのヨーヨーを現代風にアップデートできれば、話題を呼び、ヒット商品を生むことができるのではないかと考えた」

アップデートの部分でムゲンヨーヨーの最も特徴的な点は、プレーする様子を専用アプリで撮影できるようにし、撮った動画を即座に投稿できる「TikTokボタン」を専用アプリ内にあらかじめ搭載したことだ。TikTokとの連携を深めることで動画を投稿しやすくし、その動画が拡散されることで新しい客を呼び込む。いわゆる“TikTok売れ”につながる仕掛けをヨーヨーのプレー体験の中に最初から組み込んでいるのだ。
工夫はTikTokボタンを用意したことだけではない。ヨーヨーの動画をTikTokに投稿してもらうには、2つの高いハードルがあった。1つは、初心者がヨーヨーをうまく操ってかっこいい技(トリック)を決めるのは至難の業であること。もう1つが、たとえトリックができたとしても、単にヨーヨーをやっているだけでは“映える”動画にするのが難しいことだ。
この2つをクリアしないことには投稿のすそ野は広がらず、結果としてTikTok売れも起きない。タカラトミーはどう克服したのか。