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タカラトミー流「TikTok売れ」 ヨーヨー×ARで勝負

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およそ20年に1度の間隔でブームが到来してきたヨーヨーに新星が現れた。2022年5月、タカラトミーが、同社公式ショッピングサイトで発売した「MUGENYOYO(ムゲンヨーヨー)」だ。単純にヨーヨーとして楽しむのは二の次。むしろ、遊んでいる様子を専用のスマートフォンアプリで動画撮影し、TikTokなどに投稿することを主眼に置いた斬新な商品設計が特徴だ。Z世代に響くのか。

◇  ◇  ◇

国内のヨーヨー市場を振り返ると、おおよそ20年周期でブームが訪れてきた。第1次ブームは1970年代後半、米国の玩具メーカーがコカ・コーラとタイアップして、ヨーヨー本体の両面に「Coca Cola」などのロゴが入った商品を提供し、小学生を中心に大人気となった。当時小学生だった、現在50代の人であれば強く記憶に残っていることだろう。

その約20年後、今30代の人が子どものころに起こった社会現象が、90年代後半にバンダイ(東京・台東)が発売し、店頭で品切れが続出するほどの一大ブームとなった「ハイパーヨーヨー」だ。児童向けの漫画雑誌とのタイアップ、競技会の開催など、積極的なプロモーションの効果もあり、空前のヒットを記録した。

そして、前回のブームから約20年の月日を経て登場したのが、タカラトミーの「ムゲンヨーヨー」である。手掛けたのは、2020年11月に発足し、玩具とデジタルの融合をテーマに全く新しい商品の開発を目指す、同社NEXTビジネス本部Moonshot事業部だ。開発を担当した同事業部Communication Team課長補佐の根岸さやか氏はこう話す。

「ヨーヨーは玩具の定番で、過去に何度かブームを起こしたことから分かるように、人を引き付ける魅力があり、遊びとしてのポテンシャルは高い。そのヨーヨーを現代風にアップデートできれば、話題を呼び、ヒット商品を生むことができるのではないかと考えた」

アップデートの部分でムゲンヨーヨーの最も特徴的な点は、プレーする様子を専用アプリで撮影できるようにし、撮った動画を即座に投稿できる「TikTokボタン」を専用アプリ内にあらかじめ搭載したことだ。TikTokとの連携を深めることで動画を投稿しやすくし、その動画が拡散されることで新しい客を呼び込む。いわゆる"TikTok売れ"につながる仕掛けをヨーヨーのプレー体験の中に最初から組み込んでいるのだ。

工夫はTikTokボタンを用意したことだけではない。ヨーヨーの動画をTikTokに投稿してもらうには、2つの高いハードルがあった。1つは、初心者がヨーヨーをうまく操ってかっこいい技(トリック)を決めるのは至難の業であること。もう1つが、たとえトリックができたとしても、単にヨーヨーをやっているだけでは"映える"動画にするのが難しいことだ。

この2つをクリアしないことには投稿のすそ野は広がらず、結果としてTikTok売れも起きない。タカラトミーはどう克服したのか。

40種類以上のARエフェクトをゲーム感覚で"開放"

まず、タカラトミーが行ったのが、難しいヨーヨーの操作性にメスを入れることだ。「ヨーヨーの技ができなくて諦めてしまうのは、昔の流行時もあったこと。それを簡単に技が決められるように"電動化"したのがポイント」と、根岸氏は言う。様々な技を繰り出すには、ヨーヨーをうまく投げて回転を長く持続させることが必要だ。だが、そもそも、その回転を保持すること自体が1つのハードルだった。

そこでタカラトミーは、ヨーヨーの本体にモーターとUSBケーブルで充電できるバッテリーを内蔵。スイッチを入れると、モーターによってバッテリーが切れるまで"無限"に近い状態で回り続ける。これにより、初心者でも技への挑戦をしやすくしたのだ。

現在50代で、第1次ブームを小学生時代にリアルで体験した筆者も、ムゲンヨーヨーで遊んでみた。挑戦したのが、技の1つである「ブランコ」。これはプレー中にストリング(ひもの部分)を指に引っ掛けて三角の形を作り、ひもとひもの間をまるでブランコのようにヨーヨーの本体を前後に揺らすものだ。

ムゲンヨーヨーはモーターでずっと安定して回り続けているため、技の手順を確認しながらゆっくりと形を作ることができ、結果、昔はできなかった技を初めて決めることができた。ブランコ程度の技であれば、ヨーヨーをやったことがない世代や若い女性でも、簡単に習得できるはずだ。

また、もう1つのハードルが、いかに"映える"動画にできるかだ。これに対しては、若者が使い慣れているギミック(仕掛け)を専用アプリに搭載した。動画加工機能である「エフェクト」である。エフェクトとは、例えば動画撮影されている自分の頭に動物の耳を付けたり、目を大きくしたりする映像上の加工のことで、スマホの動画アプリなどでは当たり前のように機能として備わっており、TikTokでも様々な種類が実装されている。

ムゲンヨーヨーは、本体に内蔵したNFC(近距離無線通信)タグで専用アプリと同期するようになっている。アプリのカメラを起動すると、ヨーヨーが回転中に放つLEDの発光色に反応し、その動きの軌道に合わせてAR(拡張現実)エフェクトが出現する仕掛けになっているのだ。

エフェクトは現在、40種類以上が用意されている。だが、ムゲンヨーヨーの購入当初は軌道上に炎が出るエフェクトなど基本の5種類しか使用できない。他のエフェクトを入手するには、動画を撮影しながらひたすら練習する必要がある。

というのも、練習する様子を撮影すると、アプリ内で「ケイデンス値」と呼ばれる経験値を取得でき、その経験値をためればためるほど、レベルアップが可能になる。そうしてレベルアップすることで、新たなエフェクトが"解放"され、使えるようになっていくのだ。どのユーザーがどれだけケイデンス値を獲得したかのランキングは毎日更新されるため、その獲得数を競うゲーム要素も備える。

ケイデンス値の獲得とレベルアップを繰り返すことで、使えるARエフェクトがどんどん増え、より幅広い表現の動画が撮れるようになる。こうして、若者になじみ深いエフェクト機能を取り込み、動画を撮るモチベーションも高めているのだ。

TikTokに投稿するまでが「ヨーヨー遊び」と再定義

こうした動画制作の土台があったうえで機能するのが、TikTokのSDK(ソフトウエア開発キット)を活用してアプリに搭載した「TikTokボタン」だ。今回、最初からTikTokとの連携を行ったのは、以前SNSによる売り上げアップ効果を目の当たりにした経験があるからだという。それは19年、超小型の室内専用アクロバットラジオコントロールカー「ギガストリーム」を発売したときのこと。ユーザーが作ったユニークな動画がSNSで大きくバズり、結果的に同年末に売り上げが跳ね上がった。

「今やUGC(ユーザー生成コンテンツ)によって話題が広がることは、ヒット玩具の最低条件。それならいっそのこと、『動画投稿するまでがヨーヨー遊び』と再定義し、デフォルトで玩具の機能にUGCを生む仕掛けを埋め込んでしまおうと考えた。そうした判断の下、最も拡散力があるZ世代が一番多く使うツールであるTikTokボタンの実装に踏み切った」(根岸氏)

動画投稿の一連の手順はこうだ。専用アプリで好みのエフェクトを選び、ムゲンヨーヨーと同期させたスマホのカメラで自身のプレーを撮影する。終了すると、TikTokボタンが表示されるのでタップすると、自身のTikTokアカウントに遷移する。そこで通常通り、楽曲を選び、タグ付けをして投稿するだけで、ARエフェクトの付いた映える動画を公開できる。撮影から投稿までが実にスムーズだ。

より技に磨きをかけようと撮影しながら練習することでケイデンス値がたまり、レベルアップして手に入れたエフェクトを使って、従来と違う技で投稿する。そのサイクルを繰り返すことで、多くのUGCが投稿されていく好循環を生むことも可能になる。

こうしてZ世代がTikTokで拡散して話題を作り、それが、ヨーヨーが流行した世代である30代や50代、さらには下の世代である小学生などにも伝播(でんぱ)していく。結果、幅広い年齢層で人気を集めて大きなブームを醸成できる――。タカラトミーは、そんなシナリオを描いているのだ。

では、実際のムゲンヨーヨーの売れ行きはどうか。まずは22年3~4月、タカラトミーはクラウドファンディングの「CAMPFIRE」で支援プロジェクトを立ち上げ、目標金額を297万円と比較的高めに設定した。すると、支援者(購入者)数455人、支援金額約330万円を集め、達成率111%と上々の滑り出しを見せたのだ。

その後、22年5月からタカラトミーの公式ショッピングサイトで限定販売を開始。これも順調に売れ、7月末には用意した個数が早々に完売した。「CAMPFIREの支援者の手元に商品が配送されたのが5月下旬。受け取ったユーザーの方々が動画を次々と投稿してくれ、それをきっかけに売り上げも伸びた。完売まではもっと時間がかかると思っていたが、想定より前倒しで達成できた」(根岸氏)

今後は、22年秋に玩具店、家電量販店の店頭に商品が並び、本格的な販売攻勢の火ぶたが切られる。「イベントなどで実際に体験できる場を提供し、エフェクトの付いた動画を大画面に映して撮った動画をその場でTikTokに投稿できるようにするなどの施策も検討している」(根岸氏)。これが実現すれば、店頭からも数多くのUGCを生み出せることになる。ユーザーの体験を損なわずに話題の拡散を加速させる、実に巧妙な販促手法といえる。

一方、エフェクトについても、TikTokに投稿された動画で使われた回数、投稿への「いいね」の数やコメントの内容などを参考に、受けそうな新しい種類を随時制作し、追加で投入していく計画だ。

従来のヨーヨー人口は男性が圧倒的に多かったが、TikTokでは既に女性の投稿もいくつかある。操作性を簡便にし、手軽に映える動画を作れる設計にしたことで、ユーザーのすそ野は着実に広がっているようだ。ユーザー層が拡大したムゲンヨーヨーが、前回ブームとなったハイパーヨーヨーに匹敵する爆発的な人気を獲得できるか。22年秋以降の商戦から目が離せない。

(ライター 高橋学、画像提供 タカラトミー、写真 古立康三)

[日経クロストレンド 2022年8月25日の記事を再構成]

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