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研究開発に性差の視点を取り入れる「ジェンダード・イノベーション」が知られるようになってきた。オス中心の動物実験や、男性の人体ダミーに基づく安全設計などによって様々な偏りがある現状を明らかにし、性差を考慮することで研究開発の質を高めようという考え方だ。先行した欧米に続き、遅れていた国内でも取り組みが動き始めた。

男性基準の研究開発 性差の見過ごし生む

お茶の水女子大学は4月、「ジェンダード・イノベーション研究所」を設立した。「この分野で『研究所』という実体的な組織ができるのは世界でも初めて」(所長の石井クンツ昌子さん)。医療や介護、トイレの設計など幅広いテーマで、性差を取り入れた研究の計画が採択された。

設立に当たり企業に連携を呼びかけたところ、多数の企業から反応があったという。「研究所を国内のジェンダード・イノベーションのハブにしたい」と石井さんは意気込む。

ジェンダード・イノベーションとは、生物学的な性別(セックス)や社会的な性別(ジェンダー)の性差を分析し、研究開発に組み入れることでより質の高い研究や技術革新を目指す考え方だ。提唱者であるロンダ・シービンガー教授が所属する米スタンフォード大学のプロジェクトサイトでは、研究開発の担い手が男性中心だったために無意識に男性が基準となり、性差が見過ごされてきた多くの事例を紹介している。

例えば医薬品開発。動物実験に使われるマウスは妊娠出産や性周期の影響のないオス中心で、臨床試験(治験)の被験者も男性が多かった。そのために薬の効き方が男女で異なってしまい、一部の医薬品は女性により高いリスクがあることが分かった。

逆に骨粗しょう症は女性の病気と思われがちで、臨床研究は男性を対象にしていない場合が多かった。だが男性も発症年齢が遅いだけで、75歳以上の男性の骨粗しょう症のリスクは十分に高いという例もある。

工学では自動車のシートベルトの例が知られる。衝突試験では主に男性のダミー人形が使われるため、1998~2008年までの米国での自動車事故データでは、同等の事故に遭った際に重傷を負う確率は女性のほうが47%高かった。

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