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結婚や出産で女性が職場から去っていったのは昔の話。ライフイベントも経ながら働き続けていくのが、令和の女性たちに多いワークスタイルだ。とはいえ、ロールモデルが身近にいなくて先行きが見通せなかったり、働き始めた頃とは違って「成長」を実感できなかったりで悩むことも。先輩女性たちはどんな体験をバネにキャリアを築いていったのだろうか。活躍する女性に、自身を今に導いた「あの頃」や迷いを脱する助けとなった「こんな言葉」を語ってもらう。

イノベーションの源泉は人的資本――。大企業の間で、スタートアップ経験者の中途採用や副業人材の活用が広がっている。変化の激しい時代に合わせた人材活性化策で、人材育成に力点を置く大企業がスタートアップに社員を出向させる例も。そうしたなか、2025年度末までに管理職に占める出向や副業といった「社外カルチャー」の経験者比率を30%以上にしようとの目標を掲げ、取り組みを進める企業がある。損保大手の三井住友海上火災保険だ。

今回は、そんな三井住友海上の執行役員で、企業品質管理部長として顧客目線で全社的なサービス水準向上を指揮する佐久間美奈子さんにご登場いただく。

佐久間さんは「外部での経験」を重視する時代の流れを先取りするかのように、20代や30代で出向を経験。しかも、その出向先が異色だ。1度目は青島幸男氏が都知事に当選し結果的に開催中止となった、世界都市博覧会(都市博)の主催団体「東京フロンティア協会」。そして2度目は、金融ビッグバンを背景に生まれたインターネット損保の三井ダイレクト損害保険だ。特に後者は創立準備から携わり、「スタートアップそのものだった」と笑う。

21年4月に三井住友海上火災保険の執行役員に就任した佐久間美奈子さんは、「外部での経験」を重視する時代の流れを先取りするかのように若い頃に2度の出向を経験した

本体に戻った佐久間さんは40代の頃、コールセンターに相当する部署でオペレーターとして長年働く人を対象にした、「有期雇用者の無期化」という新しい人事制度の導入をリーダーとしてやり遂げた。改正労働契約法によって、「無期転換ルール」が適用される前のことだ。若い頃の出向で経験値を広げたことは、そうした活躍にも役立ったようだ。佐久間さんの歩みを追う。

大学では保険のゼミ 身近に感じて入社

1991年に大学を卒業し、新卒では三井海上火災保険(現・三井住友海上火災)に入社した。大学時代、商学部で保険関係のゼミに所属していたのが、志望理由の1つだ。

「損害保険て、面白い商品だな」と思っていました。たとえば海外と貿易を始めるとしますね。そこで、保険がなかったら、事故や災害に見舞われても何の補償もなく損失だけが生じてしまいます。保険がなければ、ビジネスにおいて新しいことを始められないし、大きな投資もできない。そうした点に魅力を感じ、保険のゼミを選んだのです。

ゼミがゼミとあって、多くの先輩が保険業界に進まれて、学生だった私にとって「会社の様子が分かるな」という感じがありました。同学年でも目指す人は多く、割と身近に感じる業界だったことが入社につながりました。

当時は人事制度が現在とは異なり、新卒採用も(転勤がある)総合職と(定型業務が多い)一般職とを分ける「コース別人事」でした。私は総合職で入社しました。総合職の同期は240人くらいで女性は8人でした。

総合職にした理由ですか? 当時、一般職というと、大半の企業が短大卒の女性を採用していて、四大卒だと「狭き門」で難しかったのです。就活では「とにかく仕事をしよう」という感じで、総合職で入ったものの、結婚などライフイベントや自分のキャリアについては特に何も考えていませんでした。それが入社からもう30年が過ぎたのかと思うと、自分でもびっくりです。よく続いたなと思います(笑)。

入社4年目 初の出向でプロジェクト管理学ぶ

最初の配属は代理店を担当する営業部門。その後、保険商品の企画・開発に携わり、入社4年目となる94年に最初の出向を経験する。出向先は東京都で半年を超える期間の開催が計画されていた都市博の主催団体「東京フロンティア協会」だった。

東京都側となる事務局の役割で、民間企業が出展するパビリオンの準備状況を確認してプレスリリースの発行やプレビューをする際のお手伝いをしたり、出展者側に何か困りごとがあった際に都との調整を図ったりする仕事でした。

周りは、様々な企業や官公庁から出向してきた、知らない方々ばかり。それぞれ、バックグラウンドや経験も違います。その分、1つのプロジェクトに対して実に様々な角度から多様な意見が出されるのです。自分の知らない世界を教えていただき、それがすごく楽しくて。「ものづくり」の現場を持たない保険会社の社員である私にとって、建築物をはじめ目に見える具体的なモノが出来上がっていく様を体感できたのは、とても新鮮でした。

この出向を通じ、プロジェクトの運営や管理の仕方を体系的に学ぶことができました。大規模イベントの準備をする職場だったので、プロジェクト計画書を読んでは分からない部分を周りの方に教えていただいて。すると、「なるほど。これがこの時期にこうなるのか」と見えてくるんです。時期ごとに何をどこまで進めておくべきかということや、プロジェクトを構成する様々な物事のつながりを把握できました。

後に本体に戻ってシステム開発に携わったとき、あるいは30代で再び出向して新会社を立ち上げていったときも、プロジェクトの進め方や管理は都市博で学んだ手法と同じでした。だから、「上司ら判断する人には、ここでこんな情報が必要だろう」と先回りして考えて動くなど、都市博準備で学んだことを生かすように務めました。

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