15の動詞を手がかりに考える
各パートとも動詞をタイトルにした5つの章で構成されている。精神のパートだと「INVERT(転回)」「ENJOY(遊び)」「RELEASE(解放)」「REST(休息)」「NOTICE(集中)」といった具合だ。このうち「INVERT」では、「努力と根性でなんとかしよう」というアプローチを180度逆転させて「どうすればもっと楽になるだろう?」と考えるアプローチを提示する。
3部合わせて15の動詞を手掛かりにエフォートレスな精神、行動、しくみ化を考えていく。個人的な体験から始まって、ネットフリックスやテスラといった注目企業の成功や失敗の事例、プロバスケットボール選手からニュートンまで出てくる古今東西の著名人の話など、多彩なエピソードを次々と繰り出しながら説いていく書きぶりは読み物としても十分面白い。
「先行発売で先週末に入荷したばかりの本。まだランキングには入ってこないけれど、今いちばん売りたい一冊」と店長の加藤よしこさんは太鼓判を押す。「生産性を上げる」といった発想より、「努力を最小化して成果を最大化する」という発想の方が、上手な働き方を見つけることにつながりそうだ。日本のビジネスパーソンには、これからの仕事への向き合い方を探る有用なヒントなるのかもしれない。
『金融庁戦記』が息の長い売れ筋に
それでは先週のベスト5を見ていこう。
(1)アートとしての信用格付け | 廣瀬和貞著(きんざい) |
(2)2030 半導体の地政学 | 太田泰彦著(日本経済新聞出版) |
(3)私はただ、「生きてる~! 」って叫びたいだけだったんだ | 大鈴佳花著(サンマーク出版) |
(4)「会社四季報」業界地図 2022年版 | 東洋経済新報社編(東洋経済新報社) |
(5)金融庁戦記 | 大鹿靖明著(講談社) |
(紀伊国屋書店大手町ビル店、2021年11月22~30日)
1位は旧興銀やムーディーズで企業審査や格付け業務に携わった著者が、企業分析の基礎と、格付け決定の機微を語った本。2位の本は、日本の半導体の将来像を地政学的な視点から考察している。3位は人気ブロガーによる小説。寝たきりになったエリート営業マンを主人公に「生きてる実感」を手に入れる物語をつづる。4位に定番の業界研究ムックの最新版。5位は、金融庁の異色官僚に焦点を当てた経済記者による金融事件ドキュメント。先月同書店を訪れたときも2位に入っており、金融街らしい息の長い売れ筋だ。今回紹介した『エフォートレス思考』はランク外だった。
(水柿武志)