――社会に良いインパクトを与える上で、スタートアップ企業の役割が特に大きいのでしょうか。

「私は石油会社の新規事業アドバイザーもやっているのですが、そこではガソリンスタンドや石油コンビナートといった既存設備をどう活用してトランスフォームするかという話になります。これに対してスタートアップは、何のしがらみもなくゼロから事業を始めるため、スタート時からカーボンニュートラルに最適化したプロダクトを作ったり、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の文脈の中で自分たちのプロダクトを実装したりできます」

「今、デジタルトランスフォーメーション(DX)が流行っていますが、あと3~5年たつとサステナビリティートランスフォーメーション(SX)とか、カーボンニュートラル・トランスフォーメーション(CNX)といった言葉が重要な文脈で語られるようになるはずです」

「国内外のインパクトスタートアップの担い手たちのやり方を見ていると、生まれながらのサステナビリティーネーティブといった感じで、プロダクト設計やサプライチェーン構築に取り組んでいます。レガシーとは無関係にゼロからスタートし、事業の経路依存性を新たに作っていけるというのが彼らの強みだと思います」

――日本でもそんなインパクトのある企業活動が増えていくでしょうか。

「サステナビリティーネーティブやSDGsネーティブなスタートアップがけん引して産業の新陳代謝が進む必要があります。そこではユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)の活躍がカギを握ると思います」

「日本のユニコーンはまだ8社程度で、国内総生産(GDP)比で考えると非常に少ない。米国は新型コロナウイルスの感染拡大後にかなり増えて300社あまりで、中国は150社、カナダが40社、ドイツが20社くらいです。日本は経済規模からいえば100社以上あってもいいと思います」

「今の大企業のあり方を否定するわけではありませんが、これらは1990年代とか平成の時代に最適化された企業です。今年の国内のエクイティ投資(株式取得・引き受けを伴う投資)が6500億円くらいといわれますが、ポテンシャルとしてはやはりこの数倍規模の投資がなされ、特に若い人たちを中心に雇用を生み出すことが非常に大事だと思います」

――他にどのような取り組みが必要ですか。

「日本の場合、デジタル投資も非常に重要です。私はデジタルとサステナビリティは表裏一体のものと考えています。例えば、食品産業のフードロスとかアパレル産業の衣服ロスが大きな環境問題になっていますが、サプライチェーンや需要予測が最適化されていないと、こうした問題が容易に起こります。バーチャルでシミュレーションして物流やリソース配分を最適化することによってロスを減らせます。再生可能エネルギーを無駄なく使うための仮想発電所というシステムもデジタル技術が支えています」

「インパクトファンドがたくさん出てきてどんどん投資をするというだけでなく、日本の古い業界のDXを進めて産業全体が一度デジタルアセット化しないと、最適なリソース配分などサステナブルなトランスフォーメーションが円滑に進まないと思います」

(編集委員 吉川和輝)

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