早川さんは「動画のナレーションやオーディオブックなど音声需要は急拡大している」と話す

人工知能（AI）技術を活用し、音声合成を手掛けるCoeFont（コエフォント、東京・港）代表の早川尚吾さん(20)。東京工業大学の現役学生だが、「声フォント」と呼ぶAI音声アプリを開発し、月間ユーザー数は20万人を突破する。70社以上のベンチャーキャピタル（VC）が投資を打診する注目の起業家だ。

「何この声、誰の声」。2021年12月16日午前、ソフトバンクグループ（SBG）の孫正義会長兼社長は思わず驚きの声を上げた。国内外の異才を集めた孫正義育英財団が開催した年末懇親会で、財団生でもある早川さんは自身が開発した声フォントの概要を披露した。

早川さんはオンラインを活用し、一風変わったプレゼンテーションを展開。様々な声を使って説明した。幼い女の子の声もあれば、中高年男性の声やプロの声優のような声もあった。様々なパターンの声を集め、AIで合成した音声も紹介した。孫氏以外の財団メンバーからも「面白い」「いいじゃない」と称賛の声が巻き起こったサービスとはどんな仕組みなのか。

登録音声は5000種類以上　声優やタレントも

声フォントのサイトに登録（基本料金500円）した人は、サイト内に提示された簡単な原稿を読み上げて声を収録する。すでに一般の人のほか、声優やタレントも自身の声を提供。5000種類以上の音声を登録している。一方、音声を利用したい人はお気に入りの声を購入し、活用できる仕組みだ。声を購入したユーザーが文章を書き込むと、AIで音声合成された利用者の声で読み上げられる。特徴は自然な発声音で、喜怒哀楽など感情も表現できることだ。

音声の購入価格はポイント制で100ポイント=1円。価格には上限があるが、声の提供者の判断でポイントを決められる。「自分の声を売って稼ぐことできる。森川智之さんら有名声優も利用している」と早川さんは話す。