ハンバーグは解凍の手間がなく、冷凍状態から両面を3分ずつ焼くだけ。今回はトマトも一緒に焼いて、付け合わせ兼ソースにしてみた。ハンバーグの原材料はイノシシのひき肉とタマネギ、マヨネーズ、そしてつなぎのパン粉で肉の比率は76%。肉の弾力がほどよく生かされ、うまみも自然だ。バーガーのパテにちょうどいい厚みで、かみごたえも心地よく、焼いたトマトの酸味や甘みとも相性がいい。

ハンバーグは水を30ml入れて、両面を3分ずつ蒸し焼きにする

同じく焼いたトマト、生のスライスタマネギと一緒にイングリッシュマフィンに挟んでみた。パンとの相性が実にいい。タマネギはみじん切りでもよかったかもしれないが、パンと合わせることで、肉の味がさらに引き立てられた印象だ。

イングリッシュマフィンでバーガー仕立てに。パンとイノシシ肉の相性の良さに開眼

鍋の冬イノシシはバラとロースの2つの部位が楽しめる。鍋用の味噌は丁寧にすったゴマに地元産の味噌を合わせて、ショウガとニンニクで香りづけされている。純和風の味噌仕立てというよりどこか無国籍な香りだが、生卵につけて食べると、すきやきの味わいになる。冬イノシシは分厚い脂がついていても脂っぽくないので、後味もさっぱりとしていた。

キャベツやタマネギと一緒に鍋に。東京のシェフが考えたレシピは味噌ベースだがゴマやショウガがきいて無国籍な味わい

「お問い合わせは30~50代の男性のお客様が多い印象です。1回食べてリピーターになってくださる方も多いですね」(おおち山くじら 代表 森田朱音さん)

4月には台湾名物「魯肉飯(ルーローハン)」のレトルトが登場する予定だ。「魯肉飯」は小さな角切りにしたバラ肉を八角と一緒にトロトロに煮込んだもので、ラーメンやカレーに次いでここ数年、男性を中心に人気が高まっている。豚ではなくイノシシ肉で作るところから、新たなジビエファンの開拓にもつながりそうだ。

同社では、県外の野生肉の処理施設と組んで、加工ノウハウを他県のジビエにも展開しようと、現在、厨房を拡張中だという。ここからさらに、令和の食卓に合うジビエ加工品が増えていきそうだ。

自然のエサだけを食べ、毎日運動しているシカやイノシシの肉は、ビタミンや鉄分が豊富で肉質はすこやか。少量でも満足感が得られるので、良質のたんぱく源として習慣にしない手はない。まずは調理のハードルが低い加工品から少しずつ取り入れてみてはいかがだろう。

(ライター 伊東由美子)