同封の説明書におでんの具にもよいと書いてあったのをヒントにポトフ仕立てに挑戦してみた。水1Lにニンニク1片とローリエ1枚を加えて沸かし、野菜とソーセージを同時に入れて、塩とオリーブ油を大さじ2ほどまわしかける。沸いたら蓋をして弱火で1時間~1時間半煮込めば完成。やさしいうまみが野菜に染み込み、スープもすっきりと透明感のある味わいだ。食べるときにフレーク状の塩やマスタードを添えてもいい。

ジビエといえば一般的に冬が猟期なので寒い季節の食材というイメージが強いが、同社では猟期が終わった春先以降、里に下りてきたシカをメインに取り扱っている。
「春先から梅雨明けまでは、里に下りてくるシカが一番多い時季なんです。うちにも月に20~30頭ほど入ってきます。冬は山で捕獲されるので里で獲れるシカは減って月に1~3頭。夏から秋も減りますね。里で捕獲されたシカは、処理場に運ぶまでの時間が短くてすむのと、内臓を外したあと枝肉をすぐに冷却でき、体温による肉質の劣化が防げるので、食肉にまわせる比率が高くなります」(同社の村田真由美さん)
枝肉で3日以上冷却すると肉はやわらかくなり、うまみも増すため、「硬い」「臭い」は昔の話ということが食べてみるとよくわかる。
商品には解凍方法や調理温度など、おいしく食べるための「鹿肉覚書」と一緒に、ひき肉用のレシピも同封されていた。シカ肉ナゲットやコロッケの作り方、ドライカレーレシピには、一緒に合わせたいターメリックライスやチャパティの作り方もあり、写真入りで丁寧に解説されている。

「みなさんにおいしく食べていただくことでシカの命は完結するので、食べ方の提案は大事にしています。シカ肉はスパイスにとても合いますよ」
ということでドライカレーを作ってみた。ひき肉は塊肉から手切りしたようなぶりっとした弾力があり、少量で満足感がある。ジビエ料理の一歩をひき肉から始めるのもおすすめだ。
「おおち山くじら」ハンバーグとイノシシ鍋
肉を卸している取引先のシェフにレシピを依頼し、一般消費者向けのジビエ加工品を作っているのが島根の「おおち山くじら」だ。レシピ考案にシェフの力を借りることはめずらしくないが、自社のイノシシ肉をふだんから使っているシェフにしぼったところが、高いクオリティーと長く愛される商品につながっている。
ホームページにはショウガ漬けやニンニク漬け、ガパオ風の味付けひき肉など、ごはんが進む加工品に加えて、冬と夏のイノシシ肉の食べ比べセットや、子イノシシが捕獲されたときに作る骨付き生ハムもスポット的に登場するなどユニークな商品がラインアップされている。今回はハンバーグ(2個入り700円)と冬イノシシの味噌すき鍋セット(3~4人前 3150円)を取り寄せた。

同社では、せっかく自然の肉を使うからには、加工品も極力ナチュラルな原料で作ることを心がけている。人気商品のポトフやビール煮込みの缶詰は、副材料もすべて無添加。ほかの加工品も工房内で添加物を加えることはしない。(ただし、パン粉など原材料にすでに添加物が入っているものについては使用を認めている)