特にその商品に愛着があるわけではないにもかかわらず購入し続けている物は、誰しもあるのではないだろうか。そうした習慣的な買い物行動はなぜ行われるのか。また、こうした心理を知ることで、企業はマーケティング施策にどのように生かすことができるのか。 米グーグルの日本法人グーグルが発表したリポートから、「何となく」購入を続ける顧客心理を解く鍵が見えてきた。

(写真/Shutterstock)
(写真/Shutterstock)

 米グーグルの日本法人グーグルは2022年3月、「継続購入の深層心理」に関するリポートを発表した。同社はこれまでにも、スマホ世代の購入の選択がどう行われるかを解き明かす「パルス消費」や、その選択がなされるまでの情報探索行動「バタフライ・サーキット」についてなど、デジタルマーケティングに関わるリポートを発表してきた。

▼関連記事 グーグルが提唱「パルス消費」 スマホ世代の消費行動の新事実 グーグルが説く無秩序な情報探索「バタフライ・サーキット」とは

 今回グーグルが着目したのは、特にこだわりがあるわけではないにもかかわらず、特定の商品を「何となく購入し続ける」生活者の心理だ。1回の購入ではなく継続購入の心理を知ることで、商品と消費者の長期的な関係構築に影響する要素を明らかにし、LTV(Life Time Value=顧客生涯価値)の最大化を目標としたマーケティング施策を打ち出すことに寄与する。

 最初にグーグルが着目したのは、初回購入時と継続購入時での心理や行動の違いだ。継続購入している物でも、初めてその商品を手に取った時には何かしらのきっかけや、事前の情報収集プロセスがあったはずだ。そうした仮説を基に調査分析を行った結果、自信がないまま商品を初回購入する人もいる一方で、初回購入時、つまりまだその商品を実際には利用したことがない状態でも、自信を持って購入する人がいることが分かった。

 両者間の差はこれまでのマーケティングでは注視されてこなかったものの、直感的な買い物行動が増えている現代においては、「直感による選択を情報を通して肯定する」ことと捉える必要がある。そこでグーグルは継続購入に至るまでの鍵として、商品選択時の自信の強度を「肯定度」と名付けた。

商品ごとの初回購入時・再購入時の選択に自信がある人の割合。初回購入時でも強い自信がある人もいることが分かる。再購入時にはすでに商品・サービスの利用経験があるため、自信が強まっている。(Think with Googleより)
商品ごとの初回購入時・再購入時の選択に自信がある人の割合。初回購入時でも強い自信がある人もいることが分かる。再購入時にはすでに商品・サービスの利用経験があるため、自信が強まっている。(Think with Googleより)

 肯定度は、直感で選んだ商品・サービスに関する情報を集め、本当にこれでいいかを再確認することで高まっていく。言い換えると、商品選択への自信が強まっていく。重要なのは、肯定度が高いと購入後の商品への満足度が上がり、再購入の意向も強くなるということだ。では、継続購入を促進する肯定度を高めるには、企業はどのようなアプローチを考えることができるのか。まず、より肯定度を高める情報探索行動の特徴を知っておきたい。

 前提として言えるのは、生活者が自発的に探した情報は、意図せずに触れる情報よりも肯定度を高めるということだ。自発的に探した情報についてさらに子細に見ていくと、肯定度を高める情報探索の特徴として、「自分が求める価値を軸に検索する」「あえてネガティブな情報を検索する」「頼れる情報は複数回閲覧する」の3点が挙げられるという。

 1つ目の「自分が求める価値を軸に検索する」に関しては、肯定度が高い状態においては低い状態に比べて、検索ワードが具体的でその商品を購入する際に重視する点や、他商品との比較軸が明確に定まっていることが分かった。例えば肯定度が高い状態でシャンプーを購入した人は、シャンプーの商品名とともに「髪のきしみ」といったキーワードを打ち込むことで、よりピンポイントな検索を行っている。

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

NIKKEI STYLE

66
この記事をいいね!する
この記事を無料で回覧・プレゼントする