ひらめきブックレビュー

男性の更年期も考慮 中高年に適した筋トレのすすめ 『50歳からの科学的「筋肉トレーニング」』

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テレワークで自宅にこもることが続いたある日、久々の顧客訪問で外出しようとすると、スーツのズボンがきつい。駅の階段で息切れがする。帰宅後、体重計にのって目を疑った。「少し運動するか……」と思っていた時、本書『50歳からの科学的「筋肉トレーニング」』を手にした。

本書は2部構成になっており、第1部は男性ホルモンや筋肥大のメカニズムなどについて生理学的観点から解説。第2部はトレーニング・マニュアルだ。初心者・中級者・上級者のそれぞれについて、6週間の1サイクルで効果が出るメニューを具体的に紹介する。すぐに始めて、効果を実感したい私のような人間にはちょうどよい。

著者のフィンク・ジュリウス氏はドイツ生まれで、日本体育大学大学院で博士号を取得。現在は米ノース・ジョージア大学准教授として、トレーニングの健康効果を中心に男性の生活の質向上の研究を続けている。

■加齢によって男性ホルモンが減少

筋トレは体脂肪・内臓脂肪を減少させるだけでなく、血糖値・血圧の低下や最大酸素摂取量の増加などの効果があり、生活習慣病にかかわる多くの項目を短期間で改善できるという。その際、重要な働きをするのが男性ホルモンの「テストステロン」で、代謝や筋肥大を促進するスイッチのような役割を果たす。

ところが、テストステロンは加齢によって減少するらしい。いわゆる男性の更年期だ。若い頃から継続的に運動をしていても、中高年になると筋肉がつきにくく太りやすくなるのはそのためである。このため中高年男性はテストステロンの減少を考慮したトレーニングが重要になる。その方法として「重量を軽く、頻度を多く」することを勧める。若者なら各部位それぞれ週1回、限界まで追い込む方法が効果的というが、中高年はメニューを「上半身」と「下半身」に分け、それぞれ週2~3回適度に刺激する、といったイメージだ。

身体の変化を踏まえた科学的な解説には説得力がある。効果的なトレーニングに向けてやる気も出る。

■トレーニングより食事や睡眠

著者は筋トレだけでなく、食事と睡眠の重要性も強調する。若い頃よりもタンパク質を多く、炭水化物を少なくし、良質な脂質をとる。忙しくて睡眠や食事に十分な時間を割けない場合、筋トレは休むべきだとも述べる。年齢を重ねると、無理をしても疲れがたまるだけで、筋肥大にはつながらないからだ。

筋トレを推奨しつつ、主眼をあくまで、現在と未来の「健康」に置くのが本書の特徴だ。筋肉をつければ、身体の健康効果はもとより精神的にも前向きになり、生活の質が向上する。続ければ、老年期になっても体力低下による趣味や旅行の制限などを防ぐことができる。

筋トレに抵抗がある人もいるだろう。しかし、意外なことに筋トレは初心者でも始めやすいという。空いた時間に1人ででき、ゆっくりした動作で負荷も自分に合わせて調節できる。きょうから取り組める運動として、筋トレを検討してみてはいかがだろうか。

今回の評者 = 倉澤 順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。早大卒。

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