共感の輪広げる指導力 国際人権団体日本代表・土井氏ヒューマン・ライツ・ウオッチ 土井香苗日本代表(上)

ヒューマン・ライツ・ウオッチ日本代表 土井香苗氏

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は常時100カ国程度の人権状況を監視する国際的な非政府組織(NGO)だ。2009年発足の東京オフィスを率いる土井香苗・日本代表(47)は「日本が人権外交を行い、国際社会に影響力を行使すべきだ」と政治家などへの働きかけに奔走する。社会を巻き込んで世界を変えていく、プロフェッショナルな「人権活動家」のあり方を日本でも確立したいと願う。

――ロシアによるウクライナ侵攻や中国の新疆ウイグル自治区での人権弾圧など、世界では基本的人権を踏みにじる動きが絶えません。

「世界の人権状況の現状、先行きは全く楽観できません。中国やロシアを含めた権威主義的国家の台頭が背景にあります。特にウクライナ侵攻は衝撃的でした。(武力により現状を変えようとする試みが)ニューノーマル(新常態)になる恐れがあります。権威主義国による明らかな人権侵害に対しては、民主主義国家が団結して状況改善に向けて圧力を強めていくことが必要です」

――人権問題への取り組みで、HRWはどのような役割を果たしていますか。

「各地の人権状況について詳細な調査報告書を年間100冊ほど公表しています。直近では、ロシア軍によるウクライナでのクラスター爆弾使用例や強制移送についてリポートしました。IT(情報技術)と教育を組み合わせた『エドテック』のスマートフォン向けアプリがいかに世界の子どものプライバシー侵害につながっているのかについても報告するなど、幅広いテーマをカバーしています」

「アドボカシーと呼ぶ政策提言も大きな役割の一つです。東京オフィスでは政治家や官僚など政策立案者へのロビイングもしています。

「私は人権活動家であると自任しています。『人権活動家』というと、声高に自らの主張を訴えているだけと誤解されがちですが、ひとりで訴えていても何も実現しません。既存の制度を変えるためには政治家や官僚など制度設計する人を巻き込み、同時に我々の訴えに共感する市民の輪を広げていく。関係者を巻き込む力を発揮し、社会や世界を変えるムーブメントを起こす人が人権活動家です」

「理念に共鳴してくれる『非公式チームメンバー』をいかに巻き込み、増やして、組織や世論の雰囲気を変えていけるか。これも、社会変革に向けたリーダーシップのあり方の一つだと思います」

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